男性間(及び男性と獣の間)の性行為を「自然に反する淫行」として禁固刑に処するドイツ帝国刑法第175条の非人道性をテーマにした作品。1871年に制定され、ナチスドイツはそれを根拠法としてホモセクシュアルの男性を強制収容所に送りこみ、約5000人の同性愛男性がホロコーストの犠牲となって命を奪われたとされる。
主人公のハンスは同性愛者として強制収容所に送られたが、終戦と共に解放されることなく刑務所に直接送致された「第175条囚人」。1969年に成人男性間の性行為が非犯罪化されるまでの20年間の物語。
同性愛者(ここでは男性のみ)を法的に差別していたという歴史的事実を扱った作品として、過去の過ちを記録する作品としては価値があるもの。ただ物語としては少々微妙な作品。
性交渉を行う二人の関係が恋愛関係に基づくものであろうと行きずりの性欲の処理に基づくものであろうと、それが同性愛というだけで法的にあるいは人道的にも差別されていいはずがない。しかし、後者は人の倫理観によっては異なる意見もあるだろうという点がこの作品が物語としては微妙なところ。
第175条による禁固刑は(ナチスドイツによるキャンプ収容を除けば)映画を観る限り1年から2年くらいのもの。20年間にハンスは刑務所を出たり入ったりしているわけだが(刑務所外での生活を全く描いていないので、ほとんどが刑務所にいる印象を得るがそれは現実的ではないだろう)、ハンスの「相手」として描かれている主要な登場人物は3人(レオ、オスカー、ヴィクトール)いるが、恋愛感情で結ばれていたのはオスカーのみ。繰り返しになるが、自分は行きずりの行為を否定するものではないが、映画の物語としてはあまり共感を呼ばないのではと感じる。
ヴィクトールとの20年間にわたる関係は、ハンスが強制収容所から刑務所に送られてきた時の同房だったことで始まる。強いホモフォビアだったヴィクトールが、20年の中でハンスと友情のような絆を結んでいくことがストーリーの一つの柱(ヴィクトールは殺人を犯して20年の間収容されているのだが、ハンスは軽犯罪によって出たり入ったりで同じ地域の犯罪者として同じ刑務所に舞い戻っている)。その二人の関係も微妙で、ヴィクトールがハンスの便宜を図る代わりにオーラルセックスを強要するような性欲の処理の道具として相手を扱うシーンは、リアリティはあるのだが物語としては邪魔だと感じた。
ヴィクトールのために刑務所に戻る(差し入れの煙草を買って)エンディングも出来過ぎ。
第175条フリーで同性愛が刑罰の対象とならない現代の場面でのハードゲイの描写は、その気がない者には少々刺激が強すぎた。そうした「雑音」が多い作品のように感じる。
★★★★★ (5/10)
