『ガメラ3 邪神覚醒』 (1999) 金子修介監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

子供の頃の刷り込み現象からか、自分は圧倒的にゴジラというよりガメラ派なのだが(子供の頃、親に連れられ劇場で観たのは『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス(1967)』だった)、昭和ガメラは今観るとさすがに子供向けの感は否めない。それに比して、平成ガメラは大人「も」どころか大人「が」楽しめる作品となっている。それは金子修介監督も勿論だが、伊藤和典の脚本、樋口真嗣の特撮によるところが大きいだろう。秀作だった『ガメラ 大怪獣空中決戦』 (1995)に続く『ガメラ2 レギオン襲来』 (1996)はいかにも続編といった感じで若干面白みに欠けたが、この作品は完結編にふさわしいシリーズ最高傑作となっている。なお、この作品は完結編として制作されたが、もし配給収益が目標の10億円に達したならシリーズは継続されたであろうことを金子監督は後日インタビューで述べている。この作品の配給収益(=興行収益から映画館の取り分を除いたもの)は6億円。シリーズの評価は高いものの、興行的には成功したとは言えない。

 

前作でガメラは人類の守護神ではなく、地球の守護神であることがエンディングで語られたが(もし人類が地球の生態系を破壊するならガメラは人類の敵となるだろう)、このシリーズ完結編はまさにそれを受けた内容となっている。怪獣同士が都市部で戦えば、当然それに伴って人的被害は出るだろうが、多くの怪獣物ではその疑問には目をつむっている。平成ガメラも前2作では、人的被害は扱われていなかったが、完結編の本作ではガメラによって親を殺された少女が主人公となっており、本編冒頭のガメラが渋谷の街でギャオスを倒す場面では巻き添えとなって1万人以上の人的被害が出たとされている。爆風で多くの人がシルエットとなって吹き飛ばされるシーンは普通の怪獣物では見られないものだった。

 

「わたしはガメラを許さない。」というキャッチコピーに込められた、ガメラをアンチヒーローとするストーリーの面白さが個人的にこの作品をシリーズ最高作だと思うゆえん。ちなみにそのキャッチコピーは前作の「ガメラはレギオンを許さない」という作中のセリフのリフレーズ。そしてそのキャッチコピーの印象が強く、同じセリフが劇中あるかと思い込んでいたのだが(自分が聞き逃したのでなければ)全く同じセリフはなかった。主人公のセリフは「あんたもガメラに家を壊されて、大事な人を踏み潰されてみなさいよ!」だった。

 

主人公の比良坂綾奈を演じる前田愛の存在感が光っていた。怪獣映画ヒロインでは間違いなくベストだろう。ガメラに対抗する怪獣がギャオスの変異体であるイリス(綾奈の飼い猫の名前から取られた)。綾奈はイリスの幼体を「自分と同じく愛する者をガメラに殺された」として慈しみをもって育てるのだが、綾奈とイリスの幼体との交流をもう少し丁寧に描いて欲しかったところ。案外あっさりとイリスは大きくなり、第2形態以降はあまり親近感を覚えないキャラクターになってしまった。

 

全体に神話的な雰囲気を盛り込み、ガメラを玄武、ギャオスを朱雀となぞられるところなどはよかったのだが、超古代文明人の末裔という役柄の山咲千里演じる朝倉と彼女のブレーンである手塚とおる演じる倉田はいらなかった。

 

そして特筆すべきはエンディングのかっこよさ。イリスとの死闘で傷ついた体でギャオスの大群に立ち向かっていくガメラの悲壮感は心に残るものだった。傑作シリーズの結末にふさわしいもの。

 

ガメラの第1作は1965年公開の『大怪獣ガメラ』。2015年にはガメラ生誕50周年記念映像として石井克人監督による4分のショートムービー『GAMERA』が公開された。令和ガメラの制作・公開が待たれる。『シン・ガメラ』でもいい。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『ガメラ3 邪神覚醒』予告編