時は10191年。宇宙は皇帝シャダム4世によって支配されていた。この時代に最も貴重な資源は、メランジと呼ばれるスパイス。砂虫が成長過程で産出される麻薬であり、その主要な作用は抗老化だが、意識を拡張することで様々な超能力の引き金になる。このスパイスを採取できるのは、砂に覆われた荒涼の惑星アラキスでのみ。通称「デューン」と呼ばれるこの星を舞台に、壮大なドラマが幕を開ける。
『イレイザーヘッド』 (1977)、『エレファント・マン』 (1980)とモノクロで独特の世界観を持った作品を作ってきたデイヴィッド・リンチが超大作SFを監督したとあって、公開当時かなり期待をして観に行き、相当がっかりしたことを記憶している作品。
リンチ自身、自分の作品の中では唯一この作品が失敗であったことを認め、今日まで多くを語ることを避けていると言われている。当時リンチは、ジョージ・ルーカスから『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』の監督をオファーされていたのだが、「それはあなたの仕事で、私の仕事ではない(It's your thing, it's not my thing)」と断ったのは有名な話。それほど入れ込んでいたにも関わらず、出来は残念なものだった。デューン新作公開に当たって、観直してみたが印象は変わらず。
原作の『デューン』は、アメリカの作家フランク・ハーバートによる全6巻からなるSF小説シリーズ(彼の死去後、息子のブライアン・ハーバードがその続編を書き続けている)。デイヴィッド・リンチはそのうち前3作の映画化を契約していたが、第一作目の興行成績の不振から、続編が作られることはなかった。
西暦10191年というかなり遠い未来の設定ながら、かなり未来感の乏しい造形や、稚拙な二重写しの映像に、当時でももう少しやりようがあったのではといぶかしく思ってしまった。
それ以上に問題だったのは、ダイジェスト版的なストーリー展開の端折り方。それもそのはず、ラフカットでは4時間を越えていたという映像を編集で2時間17分に切り詰めたのだから、やはり無理があるだろう。特に後半の早回し的な展開。ポウルがあれよあれよという間にフレーメンのリーダーになって終局までなだれ込む展開は、あまりにも安易な感じだった。
また、登場人物のモノローグがやたらと多いのも違和感あり。キャラクターが考えていることを内面の声で語らせているのだから、そのシーンは単なる説明描写に陥り、映画としての含みが全くなくなって味気ないものになってしまっていた。
あと、スティングが配役されていることが一つの売りだったのだが、あまり重要な役ではなく、途中までほとんどセリフがなく、最後にとってつけたように主人公のポウル・アトレイデス(カイル・マクラクラン、この作品が彼のデビュー作)と無意味な決闘をするのだが、盛り上がらなかったことこの上なかった。
リンチらしい、おどろおどろしいキャラクターやフェティッシュなアクション(ハルコネン男爵がレディ・ジェシカにつばを垂らすところがその最たるものか)にファンとしては一抹の喜びを見出すのだが、それだけで作品全体を観通すのは辛いと言える。
★★★★ (4/10)
『デューン/砂の惑星』予告編