『バルーン 奇蹟の脱出飛行』 (2018) ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

ドイツ・フランス・アメリカ共同制作。1982年ウォルト・ディズニー制作の『気球の8人』のリメイク。

 

1979年、東ドイツ。ベルリンの壁が崩壊することなど全く想像すらできなかった時代。抑圧から逃れるべく電気技師のペーターとその家族は、手作りの熱気球で西ドイツへ亡命しようとするが、国境まであと数百メートルの地点で不時着してしまう。準備に2年を費やした計画の失敗に落胆するペーターだったが、家族に励まされて再び東ドイツからの脱出を目指す。親友ギュンターの家族も計画に加わるが、彼の兵役が控えているため、決行までのタイムリミットはわずか6週間。不眠不休で気球作りの作業を続ける彼らに、秘密警察の捜査の手が迫る。

 

夜に熱気球で逃亡するというのは大胆を通り越して無謀と思われた。夜の空に明るく浮かぶ熱気球が目立たないはずがないから。そして、一度目の失敗で秘密警察に目を付けられ、逃亡当日はヘリコプターまで出動して追尾されながら、それを振り切って逃げおおせたというのは「奇蹟」と言ってもいいかもしれない。これが実話を基にしたのでなければ、ナンセンスであり得ないと考えてしまうレベル。

 

この実話を映画化する場合の難しさは、結論が見えていること。結果、失敗するのではというハラハラ感は、どうしても減殺されてしまう。それでもうまく作るのが、多くの脱出劇を扱った作品なのだが、この作品ではそれほどうまく行っていなかった。その理由が、秘密警察の無能さ。一般人の国外亡命にどれほど彼らが真剣になるのかは知りようがないが、彼らが有能であれば、観客にももう少し危機感は伝わっただろう。

 

また、抑圧された社会から自由を求めての逃亡が、亡命を求める家族の動機であることは言うまでもないが、彼らの生活ぶりが資本主義の下でのものとあまり変わっているように見えず、リスクを取る動機に訴えかけるものが感じられなかった。

 

逃亡家族のピンチの状況は、予告編で描かれているもの以上ではなく、しかも一番のピンチが結局夢オチというのは反則だろう。

 

命の危険を冒してまで亡命しようとする家族に気持ちを重ねることができる、想像力豊かな人限定の作品ということでいいだろう。

 

★★★★ (4/10)

 

『バルーン 奇蹟の脱出飛行』予告編