『ヒストリー・オブ・バイオレンス』 (2005) デヴィッド・クローネンバーグ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

インディアナ州の田舎町。そこで小さなダイナーを経営するトム・ストールは、弁護士の妻、高校生の息子、幼い娘に囲まれた平凡だが幸せな家庭を築いていた。そんなある日、閉店間際の彼の店に二人組の強盗が現れる。しかしトムは、驚くべき身のこなしで二人組を見事に撃退する。彼の活躍は、地元のヒーローとして大々的に報道された。その数日後、報道によって彼の存在を知ったフィラデルフィアのマフィア、カール・フォガティが現れる。トムのことを「ジョーイ」と呼んで執拗に付きまとうフォガティ。彼の登場により、トムと彼の家族の運命は大きく変わることになる。

 

20世紀のデヴィッド・クローネンバーグは、幾分猟奇的で独自の世界観をもったボディ・ホラーを作っていた。その代表作は『ヴィデオドローム』(1983年)であり『戦慄の絆』(1988年)である。しかし、今世紀に入って、デヴィッド・クローネンバーグはカルト的な世界から抜け出して、よりマスを意識した作品を手がけるようになったように感じる。その代表的な傑作は、この作品の次作『イースタン・プロミス』 (2007年)。その傑作と同じ空気をもった作品(主人公を演じるのは同じヴィゴ・モーテンセン)であり、よりシンプルでストレートな印象。

 

 

ラストシーンが秀逸。善良な夫であり父だと思っていた存在が突然、正体不明のモンスターのように感じられる。家族は、その現実とどう向き合い、受け入れるのか。無言の家族の食卓がその困惑、恐怖を表している。最後に顔を上げて、夫の顔を真正面から見つめた妻の瞳は何を語っているのだろうか。そこに明確な答えを読み取ることはできない。そうした宙に放り出されたような不安を感じさせるところがクローネンバーグらしいところ。

 

SFチックな独特なホラーがクローネンバーグの真骨頂だが、入門編としてこの作品と次作の『イースタン・プロミス』は多くの人に勧められるべき作品だろう。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』予告編