『カメレオンマン』 (1983) ウディ・アレン監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

1920年代アメリカ。カメレオンのように周囲の環境に順応し、容姿までも変えてしまう特異体質をもつ男レナード・ゼリグ。そんな奇想天外な男の生涯を、記録フィルムや証言によって擬似ドキュメンタリー形式で描いた作品。

 

ウディ・アレンらしいクレバーな作品。モキュメンタリーというフォーマットは、ホラーやコメディに使われることが少なくないが、これはコメディでの好例。自分が好きなニュージーランドのタイカ・ワイティティ監督にも『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』 (2014年)というモキュメンタリ―・コメディの秀作があるが、この作品はそれに並ぶもの。

 

ゼリグの特殊体質は、子供の時に『白鯨』を読んだことがあるかと友だちに聞かれ、読んでいなかったけれどもバカにされることを怖れて嘘をついてからだと作品中で説明される。他者に迎合することでその他者に容姿までもがそっくりになってしまうというのは、ありがちな人間の弱さに対する風刺。彼は大衆に熱狂的に受け入れられるが、あることをきっかけに嫌悪され、そしてまた人気を取り戻すことができる。そうした大衆の軽薄さも笑いの対象となっている。

 

ゼリグを最初は研究対象として見ていたが、次第に人として惹きつけられ愛するようになるユードラ・フレッチャー医師を演じているのは、実生活でも蜜月の関係であったミア・ファロー。繊細であり、ともすると神経質な印象の彼女は、ゼリグのパートナーとなる役にぴったりであり、実生活でも相性が合ったのだろうと伺わせる。

 

今日の日本では、今一つ認知度が低い印象の作品だが、70年代後半から80年代前半の脂がのった時期のウディ・アレン監督の秀作の一つ。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『カメレオンマン』予告編