『愛がなんだ』 (2019) 今泉力哉監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

28歳OLのテルコは、友人の結婚式で偶然出会ったマモルのことが好きになって以来、仕事や友人はどうでもよくなるほどマモルのことしか考えられなくなっていた。一方、マモルにとってテルコは、ただの都合のいい女でしかなかった。ある日、二人は急接近しテルコは有頂天になるが、その関係は長くは続かず、ある日突然マモルからの連絡が途絶えてしまう。

 

主人公テルコと近い年代の女性に圧倒的支持を得ている作品。それもそのはず、この作品は恋愛に関して「非リア充」の多くの人に少なからぬ共感を与えるものだから。

 

ストレートな恋愛物でありながら、そこに描かれている恋愛の形は全くストレートではない。テルコにとってのマモルのように、自分が心底愛することができる対象と巡り合える人は、現実にはそれほど多くはないだろう。だからこそ恋愛を扱った作品の王道のパターンはそうした稀有な二人の関係を描き、彼らが困難を乗り越えて結ばれるか、あるいは悲恋物語として『ロミオとジュリエット』のように結ばれないかである。つまりお互いの思いは通じ合うということが前提。それは「非リア充」にとっての憧れなのだが、同時に嫉妬も呼ぶだろう。

 

この作品に描かれている恋愛感情は、悲惨なほどに片思いである。それゆえ多くの人が安心をし、共感を覚えるということになる。つまり、「他人事」ならぬ「自分事」がこの作品には描かれている。

 

主要な登場人物となるのはテルコ、マモルのほか、彼らと三角関係となるすみれ、そしてもう一組のカップルの葉子とナカハラ。テルコ、マモルの関係と葉子、ナカハラの関係は、一途に想う者とそれを都合のいい相手とする相似形。しかし、男女を入れ替え、どう自分たちの関係に決着をつけるかに変化をつけて、ストーリーを興味深いものにしている。この5人の中では、最も見た目にアンユージュアルなすみれが、一番まともな恋愛観を持っているのも面白い。

 

個人的には、一歩間違えればストーカー的な粘着気質は極端に苦手なので(例えば、大ヒットした大根仁監督『モテキ』にもそれを感じて、感情移入できなかった)、テルコにそれほど共感したわけではなく、第三者的には「いいんじゃない、人それぞれだし。頑張れば」と思いながら、マモルのダメ男の要素を自分の中に見つけて複雑な心境で観ていた。

 

タイトルは『愛がなんだ』と「それがどうした」的な威勢のいいものになっているが、その実、観る者に「愛とはなんだ」と問いかける作品となっていて、受け手によってその答えは違うと思われる。

 

テルコを演じた岸井ゆきのは、TVドラマ『99.9』で松潤演じる主人公の刑事弁護士深山に一方的に想いを寄せる加奈子役を好演しており、加奈子とキャラが被るこの役柄ははまり役。

 

マモル役の成田凌は言うまでなくイケメン(そうでなければ『Men's NON-NO』のモデルは務まらない)なのだが、この作品での役柄は「モテる要素なし」という設定。それを理解した上で、イケメンでないマモルを想像してみると、成田凌の演技は悪くない。それでも成田凌はイケメンのゲス男の方が似合っている。『チワワちゃん』の彼の存在感は光っていた。

 

結論は、「非リア充」必見。刺さる人には間違いなくグサグサくる作品であることは間違いない。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『愛がなんだ』予告編