『リトル・ミス・サンシャイン』 ★★★★★★★★★ (9/10)
『バベル』 ★★★★★★★ (7/10)
『硫黄島からの手紙』 ★★★★★ (6/10)
『クィーン』 ★★★★★ (5/10)
『ディパーテッド』 ★★★★ (4/10) -受賞作-
今世紀最も理解に苦しむ作品賞受賞作が『ディパーテッド』だろう。『タクシードライバー』(1976年)、『レイジング・ブル』(1980年)、『グッドフェローズ』(1990年)、『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002年)、『アビエイター』(2004年)といった秀作でノミネートされながら、とことんオスカーに見放され続けてきたマーティン・スコセッシ監督。運の悪さは、『タクシードライバー』は『ロッキー』、『レイジング・ブル』は『普通の人々』、『グッドフェローズ』は『ダンス・ウィズ・ウルブズ』、『アビエイター』は『ミリオンダラー・ベイビー』という強敵に阻まれたことにある(2002年は『シカゴ』が受賞し、相手関係では最大のチャンスだったと思われるが、『ギャング・オブ・ニューヨーク』も悪い作品ではないのだが、いかんせんスコセッシのノミネート作の中ではイマひとつ)。
内輪の賞であるアカデミー賞は、過去の功績との合わせ技で受賞ということが多分にあるのだが、この駄作で巨匠に作品賞と監督賞の両方を与えるというのは失礼なのではとすら思ってしまう。投票したアカデミー会員は、オリジナルの『インファナル・アフェア』を観たのだろうか。観ていたとしたら、『ディパーテッド』に投票することはないであろうから、多分観ていないのだろう。
海外作品のひどいハリウッド・リメイクは枚挙にいとまはないが、落差という点で自分が思いつくのは、この『ディパーテッド』とリュック・ベッソン監督『ニキータ』をリメイクした『アサシン』が双璧。
オリジナルでは、ヤン(トニー・レオン)の潜伏捜査のストレスを癒してくれる唯一の場所が、ドクター・リー(ケリー・チャン)の心理カウンセリングのベッドであり、二人の微妙な関係がとてもいい味を出していた。それがスコセッシのリメイク版では、情緒も何もなく、セックスシーンまで盛り込まれて完全にぶち壊しだった。
この年のノミネート作では、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『バベル』は素晴らしい作品。『アモーレス・ペロス』での監督デビュー以来駄作がないイニャリトゥのベストである『レヴェナント:蘇えりし者』に次ぐ作品と思っている。
その『バベル』よりも個人的に高く評価しているのが『リトル・ミス・サンシャイン』。サンダンス映画祭でプレミア上映されると絶賛され、その日のうちに配給会社の入札競争となり同映画祭史上最高価格で落札されたという逸話もむべなるかなと思われる。インディーズらしい雰囲気を持ち、コメディとペーソスが実にバランスよく調和した上質の作品。