『アモーレス・ぺロス』 (2000) アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

イニャリトゥの長編監督デビュー作。近作『バベル』、『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『レヴェナント:蘇りし者』に比べると、完成度は譲るものの、十分に深みをもった彼らしい作品。2時間34分の長尺を一気に観させる勢いはむしろ近作以上のものがある。

 

メキシコシティ。オクタビオは、強盗を繰り返し放蕩する兄の妻を愛し、駆け落ちすることを夢見て闘犬で金を稼いでいる。スペインから移り住む人気モデルのバレリアは、不倫相手の雑誌編集長が妻と別居することで、愛犬と共に新居のマンションで新たな生活を始める。多くの犬と浮浪者のような生活をするエル・チーボは、かつては大学教授だったが妻と娘を捨て反政府組織に入り、20年の投獄生活後の今は殺し屋となっている。

 

ひとつの交通事故を起点に時間を前後して、3人を主役とする3つのストーリーが重なり合う。原題(直訳は「犬のような愛」)が示すように、それぞれのストーリーに犬が関係しているのが小技として効いている。

 

亡くなった息子のためにこの作品を作ったというイニャリトゥ監督は次のように述べている。

 

「人は失ったもので形成される。人生は失うことの連続だ。失うことでなりたかった自分になるのではなく、本当の自分になれるのだ。」

 

この言葉が示しているように、テーマは「愛と喪失」。このテーマはこの作品に続く『21グラム』や『バベル』でも共通しているものだと言える。

 

3つのストーリーの中でも、に印象的なのは、この作品が長編映画初出演となるガエル・ガルシア・ベルナルがオクタビオを演じるもの。暴力をふるう夫をそれでも愛する兄嫁への抑えきれない情念が、あまりに切ない。

 

デビュー作にしてイニャリトゥらしい魅力にあふれた作品。見逃すべきではない。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『アモーレス・ぺロス』予告編