バツイチ中年サラリーマンの信(浅野忠信)は、再婚相手の奈苗(田中麗奈)と連れ子の娘二人と、幸せな家庭を築こうと努力していた。だが奈苗の妊娠が、小学校6年生の長女に複雑な気持ちを起こさせる。反抗的な態度を取り始めた彼女は、父親としての信の存在を否定し、かつてDVで家庭を崩壊に導いたはずの実の父親に会いたいと言いだした。長女を実の父親の沢田(宮藤官九郎)に会わせる信だったが、次第に現在の家族に息苦しさを感じ始める。
家庭崩壊と再生の物語。そこには、実の親と育ての親と子供の関係がある。是枝の名作『そして父になる』と似たテーマを扱っているが、離婚と再婚という状況はよりリアルであり、思春期にさしかかった子供の心理がよりフォーカスされている。
家庭内の軋轢により終始重苦しい雰囲気だが、特に信の置かれた状況(仕事ではリストラ同然の出向、家庭では連れ子の反抗)がかなりシビア。それを演じるのが浅野忠信だが、やはり彼は独特な雰囲気を持つ役者だと感じた。何を考えているのか底が知れない感じがあり、キレそうでキレない我慢の限界を持ちこたえようとする役柄にははまっていた。女性はそれより脇役なのだが、田中麗奈と寺島しのぶという実力派を揃えたのもよかった。
信がデンタルフロスを使うシーンや、奈苗がフェイスパックをしながらストレッチをするシーンなど、何気ない日常のリアルを切り取るところに監督のうまさがあると感じた。
家族のあり方を考えさせられるシリアスな原作を、雰囲気のある役者陣を使って味のある作品に仕上げた佳作。
★★★★★★★ (7/10)