『オール・ザット・ジャズ』 (1979) ボブ・フォッシー監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

20世紀のミュージカル史上最大の振付&演出家ボブ・フォッシーが自伝的作品を自ら監督した作品。ミュージカル映画の名作の一つであることは間違いない。

 

フォッシー自ら監督であるがゆえ、作品中で演じられるダンス・パフォーマンスは超一流。特に気に入ったのは、作品の中で設定されたミュージカルのリハーサル「Take Off With Us」のシーンと、ガールフレンドのケイト・ジャガーと娘のミシェルがジョー・ギデオン(ロイ・シャイダー)を喜ばせようと踊る「Everything Old Is New Again」のシーン。

 

「Take Off With Us」

 

「Everything Old Is New Again」

 

ミュージカルと言っても、ダンス・シーンは劇中劇やジョーの空想のシーンと設定が限定されているため、セリフがそのまま歌になっているクラシカルなミュージカルとは異なっている。フォッシーはその方が舞台ではない映画というフォーマットにより合っていると思ったのかもしれない。ミュージカルが苦手な人でも比較的素直に観ることができるはず。

 

ジョーの自己破滅的で破天荒な生き方は、ショービジネスに生きる者の姿としてよく描けている。しかし、それは想像の範囲内。この映画が特によいのは、フォッシーの死生観が現れていることである。ジョーが作品の中で監督する映画で扱われている題材は「死」をパロディにしたスタンドアップコメディ。ジョーが生死の境を彷徨うシーンでも、コメディアンの死に関するジョークが音声として挿入されている。そして死の間際には、彼の周囲の者を登場人物とするダンス・シーンが繰り広げられ、あたかも彼の死を華やかに弔っているよう。つまり、この作品はボブ・フォッシーにとって自らプロデュースする生前葬のような意味を持つのかもしれない。

 

ミュージカルの名作であり、ミュージカルが好きでない人も観逃すには惜しい作品。是非。

 

★★★★★★★★ (8/10)

 

『オール・ザット・ジャズ』予告編