『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』 (2016) エイスリング・ウォルシュ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

カナダの画家モード・ルイスを題材とした作品。アイルランドの監督の作品だが、主人公はカナダで愛されている画家ということもあり、こちらでは早くから予告編では目にしていた。しかし、最初はあまり食指が動かなかった。予告編を見る限り「いかにもいい話」そうで、またサリー・ホーキンスが演じる主人公に魅力を感じなかったから。しかし、たまたま彼女の絵を目にして、その温かさに心を動かされ、そうした作品を描く人物に興味を持ったことから観てみようと思った。

 

カナダの女流画家モード・ルイスをサリー・ホーキンスが演じる『Maudie』

 

夫のエヴェレット・ルイスを演じるイーサン・ホークの演技が秀逸。頑固者で周りの誰からも嫌われているという設定はありがちなのだが、そのひねくれ度合いが半端ない。そしてモードは、若年性関節リウマチで障害を抱えているのだが、障害者に対する差別が甚だしい時代の話であり、そうした世間のはみ出し者同志が心を通わせるというストーリー。

 

彼らがお互いを必要とし、そして愛し合うようになる。しかし、夫はストレートに愛情を表現できず、妻はそれでもへこたれない。しかし、モードがエヴェレットと出会う前、かつて産んだ子供は奇形であり、生まれた直後に死んだと聞かされていたのに、実際には裕福な家に金で売られていたこと(障害者差別によるものと思われる)を知ってショックを受けている時にも、エヴェレットは自分のことしか考えず、とうとうモードはエヴェレットの元を去る。エヴェレットは失意の後、モードを迎えに行くのだが、モードが言った言葉は「I am better than dogs.」。初めて家政婦としてエヴェレットの家に行った際、「俺のルールに従わなければならない。この家では、俺がいて、犬がいて、鶏がいて、そしてその後にお前だ」という言葉を、長年に亘って心に刻んでいたということを知らされる。エヴェレットは「お前は俺には出来過ぎの女房だ」と言い、モードは「あなたが私にとっての全て」と言う。この互いがリスペクトしあっているやり取りが感動的だった。

 

モードは父母が亡くなり、叔母に引き取られるのだが、辛く当たられ、家出同然でエヴェレットのところに住み込みの家政婦になる。後年、その叔母が体調が悪くて死を覚悟した時に、モードは遠ざけていたその叔母を訪れる。そしてその叔母は「自分の家族の中で幸せだったのはあなただけだったわ」と言う。それは障害という逆境にもめげず、明るく気丈に振舞っているモードを見ての言葉であった。

 

夫婦愛や人の幸せとは何だろうかということを深く考えさせられる、実に感動的な作品。もしそうしたテーマに興味があればお勧めの一作である。

 

★★★★★★★ (7/10)

 

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』予告編