アイルランドの長編アニメーション映画。アイルランドに伝わる妖精のセルキーの母親と人間の父親の間に生まれた兄妹の冒険が描かれる。
妖精譚がモチーフだが、妹のシアーシャが生まれると共に海に帰って行った母親を失った兄(=母は妖精だが、妹が妖精であるのに兄は人間)の成長物語がメインテーマと捉えることができる。
アイルランドの民間伝承だが、妖精と言ってもアザラシが生まれ変わったようであり、そのモチーフ自体は人魚伝説や『鶴の恩返し』のような雰囲気を持っている。そうした民間伝承の説話を現代作品に仕立てるということは、過去の遺産を受け継ぐことで、先祖へのリスペクトにほかならない。
デザインは美しい。フラットな描写そのものは『ちびまる子ちゃん』レベルだが、どのキャラクターも愛くるしい魅力に溢れている。背景の描写は凝ったタペストリーを見るようで、リアリティとは異なる美的世界観を作り出している。
ストレートな感動物語でひねりはなく、日本のアニメほどの進化は見られないが、ディズニーの商業アニメよりはよほど上質。子供にいいものを観せたいというのであれば、悪くない選択。
★★★★★ (5/10)