秀作『横道世之介』の沖田修一監督最新作。
田村栄吉(松田龍平)は東京に住み、売れないデスメタルバンドのヴォーカリスト。同棲している恋人・由佳(前田敦子)とできちゃった婚を報告しに、7年帰っていない故郷の広島の離島・戸鼻島に帰省することになった。疎遠にしている彼の父・治(柄本明)はこよなく矢沢永吉を愛し、母・春子(もたいまさこ)は筋金入りのカープファン。
帰省している間に治が末期がんであることが分かり、残り少ない時間を過ごすため、栄吉と由佳は戸鼻島に残ることにした。すぐに仲良くなった由佳と春子に対し、栄吉と治はどのようにして間を埋めるのかお互い困惑するばかりだった。
とにかく松田龍平がいい。中二病がそのまま大人になったような演技をやらせれば、彼の右に出る者はいない。この映画で、死期の迫った父・治と海岸で語り合うシーンの演技は最高。
今まで出演した映画での前田敦子の演技はさえなかったが、この映画ではもたいまさこに支えられてオッケー。
『横道世之介』のよさは、吉田修一の原作のよさ(ほかに映画化されたものでは、李相日監督『悪人』や大森立嗣監督『さよなら渓谷』といったいい作品がある)によるところが大きかったのだな、と理解したが、肩のこらないホームドラマコメディとしては「あり」の作品。断末魔(栄吉のデスメタルバンドの名前でもある)のシーンは悪ノリし過ぎだが、何度も笑わせてもらった。永ちゃんとカープファンは必見(というのはウソ)。
★★★★★★ (6/10)
『モヒカン故郷に帰る』予告編