『光りの墓』 (2015) アピチャッポン・ウィーラセタクン監督 | FLICKS FREAK

FLICKS FREAK

いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



タイ東北部イサーンに建てられた仮設病院。かつて学校だったこの病院には、謎の眠り病にかかった兵士たちが収容され、色と光による療法が施されていた。病院にやって来た女性ジェンは、身寄りのない兵士イットの世話をはじめる。病院には眠る兵士たちの魂と交信できる特殊能力を持った若い女性ケンがおり、ジェンは彼女と親しくなる。やがてジェンは、病院のある場所がはるか昔に王様たちの墓だったことが、兵士たちの眠り病に関係していることに気づく。

一応、ストーリーらしいものはあるが、全く物語りの体をなしていない。勿論、絵画や舞踏にストーリーはなくても楽しめるが、映画に意味をなすストーリーがあるべきかどうかは個々人の映画観によるだろう。

日常の延長の不条理なシーンが織り交ぜられるこの作品を自分は楽しむことができなかった。例えば、野糞をする後ろ姿の30秒、映画が終わって観客が一斉に立ちあがって立ちすくむ30秒、あるいは公園で歩く人と座る人が無造作に頻繁にそれらを繰り返す30秒。それらに意味を求めることは不必要なのかもしれないが、それでも作品にある種の「雰囲気」を与え、全体として作品としてまとまることは必要であろう。例えばレオス・カラックスやグザヴィエ・ドランの作品のように。自分にはそうした美意識は残念ながら感じられなかった。

タイの空気感をよく伝えた作品ではあるが、この作品を楽しめる人は、映画を観るということを通常の人とは違う感覚で捉えている人に限られるように感じた。「自分はもしかしたら」というチャレンジャーに限定の作品。

★★★ (3/10)
『光りの墓』予告編