『ウィッチ』 (2015) ロバート・エガーズ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



毎年1月に開催されるインディペンデント映画を対象としたサンダンス映画祭のコンペティション部門は、「USドラマ」「USドキュメンタリー」「ワールド・ドラマ」「ワールド・ドキュメンタリー」の4部門に分かれている。2015年のUSドラマ部門では、グランプリ(審査員大賞)と観客賞を『Me and Earl and the Dying Girl』が受賞したが、監督賞を受賞したのはこの作品が長編初監督作となるロバート・エガーズ。

舞台は1630年のニューイングランド。イギリスから清教徒がメイフラワー号で入植したのが1620年だから、アメリカの(先住民以降の)歴史の黎明期。オリジナルタイトルに「A New-England Folktale」というサブタイトルがつけられていて、実際にこのような民間説話があったのかは不明だが、いかにもありそうな内容。魔女に対する恐怖がどのようにして人々の間で生まれ、人を疑心暗鬼にし、その結果何が起こりうるかを描いている。

映画を観て、とにかく英語が聞き取れない。1630年当時の言い回しを模しているだろうが、訛りが強すぎて、多分1/3くらいしか理解できなかった。アメリカ人はどうかと思って、レビューをチェックすると、「1/3は分からなかった。字幕をつけるべき」とあったので、ネイティブでもアメリカ人には相当聞き取り辛いらしいことが分かった。イギリス人はまだ分かるのだろうか。話は込み入っていないので、映像から十分フォローはできたが。

ホラー映画はあまり好んで観る方ではないのだが、この映画には美学があるように感じたので観てみた。予想に違わず、プロダクションは上質。舞台はアメリカだが、ヨーロッパ中世の影響が色濃く出ており、「魔女」という言葉が醸し出すゴシックな雰囲気がリアルに映像となっていた。

魔女狩りや魔女裁判は集団ヒステリーや集団幻覚が引き起こしたものと考えられているが、この映画でも、邪悪なものへの畏怖が魔女を生み出す情景がよく描かれていた。スーパーナチュラルなシーンもあるが、それは人が心に描く幻覚として観て違和感はなかった。

ただ単に人を怖がらせるだけのお化け屋敷的なチープさはない上質のホラー(但し、あまり怖くはない)。「魔女」というキーワードに触手が動いたら、観る価値ありだろう。

★★★★★ (5/10)

『ウィッチ』予告編