『パンチドランク・ラブ 』 (2002) ポール・トーマス・アンダーソン監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



PTアンダーソンの監督4作目『パンチドランク・ラブ』。2作目の『ブギーナイツ』はそこそこだと思ったが、3作目の『マグノリア』は素晴らしく、期待して観たこの作品もその期待にそぐわないものだと感じた。しかし、それ以降の作品『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ザ・マスター』『インヒアレント・ヴァイス』はいずれも好みに合わず、PTアンダーソンの評価は自分の中では下がる一方だった。

久々に観た『パンチドランク・ラブ』は、やはり秀逸だった。

ロサンゼルスに住むバリー・イーガン(アダム・サンドラー)は、何かと口うるさい7人の姉たちの中で育ったため、事あるごとに情緒不安定に陥り、かつ女性に対する不信感を抱くどこか寂しい男でもあった。ある日、姉の一人が同僚であるリナ(エミリー・ワトソン)を彼の職場に連れてくる。静かで優しい雰囲気の彼女に心を寄せるバリー。そして二人の距離は徐々に狭まっていく。かつてない幸福感を味わっていたバリーだったが、ある夜にふとダイヤルを回したテレフォン・セックス・サービスによりゆすられることになる。再び負け犬人生へ逆戻りかと思われたのだが、バリーは自分を奮い立たせてそのゆすり屋(フィリップ・シーモア・ホフマン)と立ち向かう。

あいかわらず不思議な雰囲気な漂うPTアンダーソンらしい映画。映画冒頭の自動車事故や、路上に置かれたリード・オルガンなど謎が多い。なぜ旅行をしないバリーがマイレージを集めることに躍起になるのかなども。それらは何の答えも与えられないまま宙に漂うよう。

関連のない小さなトラブルが立て続けに起こり、周りの人間が口ぐちに話しかける状況では、バリーの不安定な精神状態がよく描かれている。

恋愛物としては穏やかでゆるやかに進行するのだが、それに緊張感を与えるのがゆすりのプロット。そのコンビネーションが実に絶妙。

アダム・サンドラーの演技は、彼以外の役者にはこの役はできないと思わせるほど。PTアンダーソンの映画の常連であるフィリップ・シーモア・ホフマンのキレキレの演技もさすが。

好みの分かれる監督ではあるが、彼の作品を未観賞であればこの作品から観るのも悪くないと思う。

★★★★★★★ (7/10)

『パンチドランク・ラブ 』予告編