『ソークト・イン・ブリーチ』 (2015) ベンジャミン・スタットラー監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



シアトルはバンクーバーから車で3時間。この街を訪れる目的の一つがEMP(Experience Music Project)博物館であり、ニルヴァーナの足跡を感じることである。そしてシアトルでの常宿は、ニルヴァーナの写真がドアを飾るHotel Max。

Hotel Max

カート・コベイン(Cobainをなぜ敢えて英語の発音と違う日本語表記にするのか分からない。ジェームズ・コバーン=James Coburn辺りと間違えたのに違いない)の死に関して、コートニー・ラヴが関与した他殺陰謀説は彼の死後、常に語られてきた。なぜ今?という感もあったが、今更ながら作成されたからには、説得力もある検証がされているのかもと思って観てみた。しかし、正直納得できる内容ではなかった。

映画は、カートの死の数日前、彼の捜索をコートニーに依頼された私立探偵トム・グラントの証言及び彼が収集した証拠に基づいて作られている。コートニーの様子に不審感を抱いたトム・グラントは捜査に関わる全ての会話を録音。その肉声の会話が映画に迫真感を与えている。

カートがコートニーとの離婚を考え、遺言を書き換えようとしていたのは事実。それゆえ離婚前にカートが死ねば数千億円の遺産が転がり込むということは確かに動機となりうる。しかし、カートの死が他殺であったとするには、全ての証拠が他殺の可能性を示唆するだけの(そして自殺だとしても矛盾がない)状況証拠に見えて仕方がない。

ショットガンの薬莢が彼の遺体の左手側に転がっていたのは不自然であると、CGを使って検証されていたのには「ほほう」と思ったが(ショットガンは死後硬直したカートの手に握られたままだったが、逆さを向いていた=引き金が上に向いていたため、薬莢は右手側に飛び出たはず)、それが他殺の証拠というにはあまりにも弱すぎる。

やはりカートの肉声が多く聞ける98年の『カート&コートニー』の方が、カート・コベイン関連のドキュメンタリーとしては楽しめた。初期捜査で自殺と判断したシアトル警察が、今更再捜査に乗り出すわけもなく(もし事実が異なるとすれば、自分たちの捜査が間違っていたことになる)、今後もカートの死に陰謀説はつきまとうだろうが、それを支持する証拠はこの映画で出尽くしたであろうし、もう耳を貸す必要はないように感じた。

★★★★ (4/10)

『ソークト・イン・ブリーチ』予告編