『オデッセイ』 (2015) リドリー・スコット監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



リドリー・スコット監督には『ブレードランナー』『エイリアン』という不朽のSF名作があり、近作の『プロメテウスも上々の出来だった。

設定自体が非現実的なフィクションのそれら作品とは異なり、『オデッセイ』はより現実的な世界を描いている。内容はむしろパニック映画的なもの。

そういう点で観客の間口はSFファンに限らず、多くの人に受けるであろう作品。

火星探索隊が天候悪化で緊急避難しなけらばならなくなった際の事故により、一人火星に残された宇宙飛行士マーク・ワトニー(マット・デイモン)が、救援が来るまでなんとかして生き延びようとするお話。

救援が来るまで数年、ところが空気も水も食糧も不十分(食糧は31日分だが、6人分なので約半年分)。地球との連絡手段もなく、そうした状況を知恵をこらして克服していくのがメインテーマ。

一人しかおらず、通信手段もなければ、話すことはないはずだが、記録のためにビデオレターを撮り続けるというのが、うまい設定。それにより観客は映画を観ながら、リアルタイムで自分が語りかけられているように感じる。

とにかくなんとかしてうまくいくんだろうなという結末を予期していることもあり、正直、宇宙飛行士のマークが死に直面しているという緊迫感は感じなかった。映画に描かれた宇宙飛行士マークは終始ポジティブで、それは確かにいかなる局面でもピンチを克服する鍵ではあるが、もう少し苦悩、孤独、絶望といったものを強調してもよかったのではないだろうか。

地球と連絡がつき、救援が来るとなっても幾多の困難は続くが、少し後半は駆け足な感じ。勿論、クライマックスは救援の瞬間だが、分かっていても喝采したくなる場面ではあった。

宇宙空間の造形は、『ゼロ・グラビティ』『インターステラー』には及ばないし、更に残念なのは火星の造形。地球のどこかでロケしているんだろうな(ロケはヨルダンのワディ・ラム)と感じてしまった。

いつもシニカルなジョークを飛ばすマーク役にマット・デイモンは、どハマりだった。

ということで、まあまあだが、やはりリドリー・スコットにはもう少し高いレベルを期待したかったところ。

★★★★★★ (6/10)

『オデッセイ』予告編