『夢売るふたり』 (2012) 西川美和監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



映画『夢売るふたり』観賞。『ゆれる』『ディア・ドクター』の西川美和監督最新作。

結婚詐欺をする夫婦のストーリー。しかし、結婚詐欺が金目当てというのは正しくないであろう(予告編ではそうなってるが)。結婚詐欺をさせることの意味は、浮気した夫への復讐をしようという女の屈折した愛。

そして、この映画で描かれているのは「女の性(さが)」。これが男の監督なら異論もあるだろうが、女性監督の作品だけに、私は生々しい「女の性」を全編から感じた。

ところが、一人目の結婚詐欺(田中麗奈)あたりまで、夫の浮気の腹いせを結婚詐欺を強いることでするという設定のリアリティのなさになかなか映画に入れない。

俄然、面白くなるのが二人目のホテトル嬢、三人目の重量挙げ選手を騙すあたりから。彼女たちの「いかにもありそうなリアリティ」に引き込まれる。

そこで気付くのが、松たか子のキャラは、随所に挿入されたシーン(オナニー、生理)で、生の女であることに引き留められるものの、「女の性」を煮詰めて上澄みを取り除いて、残ったものを体現したのではないかということだった。

そうしたリアリティのあるなしの対比が監督の計算なのではと思う。

秀逸なのは、四人目のハローワーク職員(木村多江)を騙すところでの松たか子の感情の揺れ。自分で仕向ければ平然と協力までするのに、夫の阿部サダヲの微妙な変化を感じ取る辺りが、さすが女性監督ならではの鋭さではないかと思う。

映画の出来としては、『ゆれる』には及ばないものの、『ディア・ドクター』よりはよかったかな、という感じ。

ただ、その深層を理解するのはなかなか骨の折れる作品。表面は分かりやすく見えるのだが、実は分かりやすい映画ではないので、もしご覧になられる方は覚悟するように。

阿部サダヲと松たか子の演技力に疑問を唱えるわけではないが、あまりに売れ過ぎていて、コマーシャルな印象が映画についてしまうのが残念。

★★★★★★ (6/10)

『夢売るふたり』予告編