『Mommy/マミー』 (2014) グザヴィエ・ドラン監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



現代のアンファン・テリブルは、フランス語圏でもカナダから生まれた。

映画『Mommy/マミー』鑑賞。

恐るべき才能。注目の監督グザヴィエ・ドランの新作は期待を裏切らない出来だった。

舞台は近未来のカナダ。医療制度の改正で、新しい法案が可決する。発達障害を抱える児童の親が、養育に困難な場合、養育を放棄し児童を施設に入れる権利を保障する、というものである。

ダイアン(通称ダイ)は、3年前に夫と死別、15歳になる息子スティーヴが収容先の施設で問題を起こし引き取ることに。元高校教師でストレスから吃音障害に悩む隣人のカイラとの触れ合いが、お互いのいい方向に作用すると思われていたが....。

主人公のスティーヴが多動性障害という設定であり、何が起こるか分からない緊張感が常にある。そして、映画のテーマはただ単に障害を抱える子供をもつ母の愛に留まらない。そうした定義付けを許さない、観客との距離の置き方がこの監督の流儀だと感じた。

昨年カンヌで、この作品がゴダールと審査員特別賞を分け合ったということも意識の片隅にあったのだろうか、観終わった印象はゴダールの『気狂いピエロ』のような鮮烈さ。

そのカンヌでのドランのスピーチ。
「誰しも自分が好むことをする権利があるにも関わらず、あなたのやることを嫌悪し、あなたを忌み嫌う人たちもいるでしょう。でも夢を持ち続けてください。そうすることで一緒に世界を変えられるからです。人々を感動させ、笑わせ、泣かせることで、人々の意識や人生を、ゆっくり変えていくことができるのです。政治家や科学者だけでなくアーティストも世界を変えられるのです。
望むことに限界はなく、夢を抱き、挑戦し、努力し、あきらめなければ、どんなことでも実現可能なのです。僕がこの賞を受賞したことこそが、その証にほかなりません。」

特にラスト20分間の疾走感はかっこよすぎる。今観るべき監督の一人であることは間違いない。

★★★★★★★★★ (9/10)

『Mommy/マミー』予告編