テリィの気持ち、キャンディの気持ち 【14】 (水色の空) | 水色のリボン

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***** 小説キャンディキャンディ FINAL STORY (長い物語のかけら 21) *****
 
 
テリィ・キャンディ編の14回目。
 
(注意)一個人の妄想のお話とご理解のうえ、お読みください。
 
 
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テリィとキャンディはアードレー家の裏の湖から、みんなのいるテラスに戻ってきた。
その場にいた人たちは、二人の仲良さげな様子に安堵をした。
テリィは彼なりに誤魔化したつもりであったが、あのときの彼の怒りは実は全く隠れてはいなかったのだ。
 
テリィがあの事実を知った時のショックは、相当なものだった。
あの事実とは、イライザの兄のニールとキャンディの婚約式が行われたことだ。
テリィにとっては、10年も前でも、取り消されたとしても、そんな事はあってはならないことだった。
 
通常、婚約とは【結婚を前提にしたもの】で、【本当に愛するひととだけ成立するもの】である。
テリィも勿論そうだった。
しかし、彼は本意ではない婚約を長くしていた。
それはそうせざるを得なかったためで、彼はやむなく同意し、そうしていた。
それは長く世間を欺くものでもあり、愛してはいない人との見せかけの婚約は彼にとって苦い経験で、その痛みは計り知れないものだった。
だから、キャンディの過去の婚約式に彼は激しく動揺した。
それは自分のせいとも思われ、そのような辛い出来事が彼女に起こったことに、すごく憤りを感じたのだ。
 
しかし、その出来事をきっかけにわかった様々な事実により、彼はキャンディと一緒に住む事を決めた。
愛するひとをそばで守るために、けじめを重んじていた彼だったが、その硬い意志を崩すことにした。
 
 
NYへキャンディが結婚の事務手続きを待たずに行く事が決まったため、テリィとキャンディはその報告をアルバートたちにした。
アルバートはそれは本当によかったといいつつも、「あの硬い意志だったテリィに何があったのだろう?」と思い、テリィにすかさず理由を聞いた。
テリィは「イライザの忠告のおかげです」、と本当のことを言った。
アルバートは「いったい何を忠告したんだい?」と興味津々にイライザに尋ねた。
イライザは本当のことなど到底言えたものではなく、しかも心の準備も無い、いきなりの大おじさまからの質問でもあり、みっともないくらいにあたふたとした。
それはその場にいた誰もがしばらく忘れることが出来ないくらい、滑稽なものだった。
「もう二度とテリィに忠告などしない!」、そうイライザは心に決めた。
 
 
いろいろあったりもしたが、まだ賑やかな時間は続いていた。
キャンディは相変わらずアニーと話が尽きないようだった。使用人がアニーのベビーも連れてきて、周囲の人も巻き込み、さらに賑やかに話の花が咲いていた。
テリィはそんなキャンディを目を細めて眺めていた。 
 
アルバートが「今日ははるばる遠くからだったね。ところでシカゴはどうだったかい?」とテリィに声をかけた。
「今日ここに来てわかりました。キャンディはずっとみんなに見守られてきたんですね」とテリィは思ったままを言った。
「みんなキャンディを大好きだからね。ぼくもあの子を養女にして本当に良かったと思っているよ。
かけがえの無い、魅力的な友人だからね」アルバートは目を細めてそう言った。
「だから、彼女は変わらずにいられたんですね」
そういったテリィをアルバートは見た。
「見守ってくれる人がいたから、彼女は安心ができて、強くいられた。
ポニーの家にいたこともよかったと思っていました。でも今日ここに来てよくわかりました。
もうずっと昔からコーンウェル夫妻と懇意を深めてきて、そしてあなたという絶対的に信頼できる養父がいたことは、どんなに心強かったかと」
「テリィ、彼女は彼女自身の強さで変わらなかったんだ、それはわかっているだろう?」
「それは勿論わかっています。それと日記を開かずに託す、でしたよね、それもわかっています。
彼女は日記を持たなくても思い出は常にあったということ、でしょう。それはおれ自身もそうでしたから。
あの日記を託すことが出来るほどに信頼が持てて、しかもそのひとがずっと見守ってくれていたなら、どんなに安心できるかは容易に想像できましたよ」
「そういわれたらそうだね。」それはアルバートも納得した。
「彼女の周りに彼女を見守ってくれる人たちがいて、本当によかったです。」テリィはそういって、話を変えた。 
 
「アードレー家の養女としては大おばさまからは愛情をあまりかけてもらえなかったと見受けられましたが、それに余りある経験を彼女はきっとしてきたのでしょう、違いますか?養父のアルバートさん」
アルバートは笑ってテリィを見た。
「そんなことまでわかったかい」そういって、「大おばさまは、ああいう人だからね。悪い人ではないんだ。ただもうこり固まった考えを変えることはできないからね」
「アルバートさんにとって、『ちょっとうるさい大叔母』でしたね。それは心配されて気になるからですよね」
「そうみたいだね。いつまでも子供のように思われているのかもしれない」アルバートは苦笑した。
「…キャンディとの結婚の事で、おれは母にやっとこの前会ったんです。そうしたらそれこそ『ちょっとうるさい母』でしたよ」とテリィも笑って言った。
「今後もずっと変わらずにキャンディを見守ってもらえたらと思っています。あなたが養父で本当に良かった。」
感謝の気持ちをこめてテリィはそう言った。
「今度からは君も見守らないといけないようだね」とアルバートは言った。
「ぼくはね、キャンディの境遇を知って彼女を幸せにしたいと思って養女にした。結局、彼女と関われてぼくのほうが多くの喜びを得たけれど。今後も変わらずにそう願っているから、彼女ともども君も見守らせてもらうよ」
「アルバートさん、ありがとうございます」そういって二人は爽やかに笑った。
 
アルバートのすぐそばにはアーチーもいつの間にかいて、ずっと二人の話を聞くとも無しに聞いていた。 
アーチーは「テリィって全くなんて奴なんだ…!」と今日で何度めかのセリフを心の中で言っていた。
今日一日で知ったテリィという人は、学院時代のテリィとは違っていた。
それは当時の若さゆえの誤解があったことは認めるが、それだけではないとも思えていた。
アルバートはテリィとの会話から、テリィにずっと感じていたある気がかりが何であるかがわかり、一日でも早くキャンディが彼のもとへいくことを望んだ。
  
 
 
楽しいシカゴの時間も過ぎ、いよいよ帰る時間となった。
帰り仕度のため、キャンディは「じゃあまたあとでね」とテリィに言って自室のドアに手をかけた。
「ちょっとだけだから」とテリィはいい、キャンディの部屋に躊躇せずに入った。
キャンディはそんなテリィを不思議そうに見ながらドアを閉め、そこから動かないまま彼を見た。
テリィは部屋に入ったもののドアのそばにいて、そして「キャンディ、あの鏡の前まで行って」と言った。
何もわからないまま、とりあえずキャンディは彼のいうとおりにした。
キャンディは部屋の中央まで行き、「これでいい?」と聞くと、テリィはそっとうなずいた。
テリィはキャンディを遠くから見て、その後ふっと笑って「全く、アーチーにはお手上げだな」と言った。
「…?」キャンディは何のことかわからなかった。
「君がおれの好きな花に見えるなんて、奴はなんていいセンスをしているんだって思ってね」
「花?」
「いや、なんでもない」そういってテリィはキャンディのそばに行き、「やっぱりとても似合っている。」と微笑んだ。
部屋はグリーンで統一されていたため、キャンディがその花のようにテリィには見えていた。
すみれ色のドレス―、ということは、花ってすみれってこと?とキャンディは思った。
キャンディの部屋には相変わらずかすかに森の香りがしていた。
 
「化粧はもうとれてもいいよな?」とテリィが聞いた。しかし、その返事を待たずに彼は彼女の口をふさいだ。
再会のときと同じだった。それは最初優しいものだったが、やはり次第に変化していった。
前と違ったのは、キャンディがそれに驚く事はなく自然に受け入れていたことだった。
彼が離れたとき、キャンディには切ない気持ちが込み上げてきた。
テリィはその表情を見て「そういう顔をされたらうれしいけど今は困る」と笑った。
そして、「今度君に会うときはNYへ迎えるときだ。だから、いろいろ覚悟をしておいて」といい、部屋を出ていった。
 
 
 
 
 
その日のシカゴの空には、雲ひとつなかった。
その空の色は、青ではなく水色で、穏やかな海を思わせるものだった。
空はまるで水色の海のようだと、だれもがそう思った。
  
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後は、、次にします。
 
 
 
 
 
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NYのお話のはずでしたが、いろいろ考え、またシカゴのお話となりました。
テリィが「すみれ」を好きなことは、漫画にも小説にも一切出てきません。
だから本当かどうかはわかりませんね。
もしかしたら、すっかり忘れ去られているかもしれません。
 
でも。
そのほうが楽しいと思い、妄想記念に書き残しておきました。