haruのブログ~争いはいらない ほしいのは愛だけ~ -30ページ目

カンタレラⅡ

「「「「ジェジュン(ひょん)!」」」」



四人に一斉に名前を叫ばれ、呼ばれた当の本人は大仰に肩を震わせて、恐る恐る声のした方を振り返った。
名前を叫んだ四人は、四人とも、それぞれの場所で起き上がり、一様にキョトンとした顔で佇んでいる。




「な、なに?」



ビクビクしながら、声をかけると、八つの目が一斉にジェジュンを振り向き、またもビクリと体を震わせる。
(まいったな…俺、こんなにビビリじゃないのに)
とは言え、寝起きだからか疲れからか、若干充血した目で睨むように見られれば、誰だってこうなる、とジェジュンは思った。



「…目が覚めたか?お前ら」
「「「「え?」」」」



共同生活を終えてから、しばらく経つというのに、過去のシンクロは、ちょっとしたことで蘇るのだろうか。
四人が、同じ声を上げ、同じように自分の置かれた状況を鑑みるために、自分の体を見つめる。その後、自分以外の三人を見、また、視線がジェジュンへと戻った。
ほんの少しの時間でも、自分から四人の視線が外れたことで、余裕を取り戻したジェジュンは、腰に手を当て、呆れたように四人を見る。



「来て早々に料理してる俺を無視して寝るとは、いい度胸じゃねーか」
「「「「え?俺たち(僕たち)、寝てた(んですか)?」」」」



同じ表情をして四人がジェジュンを見るものだから、ジェジュンはなんだかおかしくなって、声をあげて笑った。
徐々に自分を取り戻してきた四人は、自分の置かれている状況を理解したのか、バツが悪そうに笑い転げているジェジュンからそれぞれ目を反らす。



「そんな…笑うな」
「ちょっと、笑いすぎだと思います」
「…ひょん」
「はぁ……」




ひとしきり大笑いしたあと、ジェジュンは目尻に浮かんだ涙を指で拭い、大きく深呼吸をした。



「まぁ、いいや。お前らが寝こけてる間に、料理できたから、準備して食べよ」



くるり、と振り向き、キッチンへ入っていくジェジュンの姿を、目で追う四人。
彼の背中が見えなくなると、彼らはそれぞれに顔を見合わせた。



「…お前らも、寝てたの?」
「そういうユノ兄も?」
「記憶ない…いつから、寝てたんだろう」
「ふぁぁ……しっかし、いい夢見たな」
「「「俺(僕)も…」」」



ほわん、と夢に思いを馳せる彼らの顔が、だらしなく緩んでいる。



「あっ!」



突然、ジュンスが大きな声をあげた。



「どうした?ジュンス」
「…ジェジュンひょん、首のとこ、どうしたの?」
「首?」



料理の入った鍋を運ぶジェジュンの首に、大きな絆創膏のようなモノが貼られている。



「これ?…なんか、起きたら傷みたいのがついてて…あ、別に心配するような傷じゃないから」
「そう…」
「痛いのか?」
「痛くないよ…ただ、…ちょっと、目立つから」
「そんな可愛らしい絆創膏の方が、目立つと思いますけど」
「そうだな」
「ちょっと、見せてみてよ。ジェジュン」
「え?」



ユチョンに『見せろ』と言われたジェジュンは、何故か頬を赤らめてモジモジし始める。



「ジェジュン?」
「べ、別に、面白くもなんともないよ?」
「その様子だと、病院とか行ってないでしょ?ジェジュン。いいから、見せて」



ユチョンがジェジュンから鍋を受け取り、首に貼られた絆創膏をはがす。
座っていたジュンスとチャンミンとユノも、二人を囲むようにユチョンの手元を覗き込んだ。



「え?」
「は?」
「これって……」
「「「歯型?」」」



ユチョン、チャンミン、ユノの声がハモる。
ジェジュンは恥ずかしそうに、そして、ジュンスも何故か顔を赤らめている。



「なんで…」
「だから、起きたら付いてたの。…もう、見られたんならいいや。絆創膏はずす」



ユチョンの手から剥がされたままの絆創膏を奪うと、クルッと丸めてダスターに放り投げ、次の料理を取りにキッチンへ向かうジェジュン。



「あれ……僕が夢で…」



ぼそっと、ジュンスが呟いた。
ジュンスのつぶやきを聞いたユチョンが、自分も夢でジェジュンの首や胸に痕をつけていた事を思い出した。
(もしかして、俺のも…?)
ユチョンは、無言で立ち上がると、せっせと動き回るジェジュンに『手伝うよ』と声をかけて近づいた。
自分が夢で、ジェジュンの首筋につけた痕をみつけようと、タンクトップの襟口からむき出しになっている肌に目を凝らす。
(…あ、あった)
チラリ、と見えた赤い痕にユチョンは、自分の体の奥が、かぁっと熱くなる気がした。



「じぇ、ジェジュン?」
「ん?なに?」
「その…首の…赤いのって…」
「あ?…あぁ、これも起きたらついてて…寝ながら擦ったのかなぁ」



(キスマークだって、それ)



「ん?どうした?ユチョン。顔赤いけど」
「な、なんでもないっ。あ、これ運んどくね」
「あ、うん。よろしくー」



人数分の皿と箸を持ち、赤い顔をして戻って来たユチョンを、チャンミンとユノが訝しげに見る。



「どうしたんだ?ユチョン」
「具合でも悪いんですか?」
「……あれは、夢で俺が……」
「「夢?」」
「あ、いい、いや、なんでもない。なんでもないんだ…」



ユノとチャンミンが顔を見合わせた。
ユチョンとジュンスは、それぞれに赤い顔をして黙々と食事の準備をしている。
(夢……ユチョン、夢って言ったよな。それに、ジュンス…)
ユノが、二人の様子を見ながら、何かを考え込むように口元に手を当てた。
(夢…)
チャンミンは、じっと動き回るジェジュンの背中を見つめる。
(ユチョン兄と、ジュンスの言った『夢』っていうのが、僕もさっき見たものだとすると…)
(夢ってことは…あれだよな…寝てる時に、見る…)
ユノの視線は、ジェジュンの下肢に、チャンミンの視線は、ジェジュンの背中に釘づけになる。
((くそっ!もっと、目立つ場所につければよかったっ!))



「ユノ、チャンミン、何してんの?」
「あ、いや…」
「あ、あはは…ジェジュン兄、僕、お腹すきました」



最後の料理を運ぶジェジュンを挟むように、ユノとチャンミンが立ち、ユチョンとジュンスは、既に自分の席についている。
ジェジュンよりも高くなった背を活かして、背中を覗き込むチャンミンと、半歩後ろに下がって短パンから伸びるジェジュンの太ももを凝視するユノに気づかず、ジェジュンはニッコリと微笑んだ。



「さ、食べようっ!」
「「「「はーい」」」」



何気ない日常の中の、ありふれた一コマ。
これが、彼らの幸せ。



(今度こそ)
(いつか、必ず)
(僕こそが)
(誰よりも、早く)
((((ジェジュンの心を掴んでみせるっ!!!!))))




固く、熱く、静かに、心に誓う四人であった。


終わり


☆★☆★★ 



Write by 甘蕉汁




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