Romantique No.620『POP SONGの魔法を信じるかい? Ⅳ 】。 | 『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

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僕が過去と現在、ロマンティークと感じた(これから感じることも)恋や音楽、映画、アートのいろいろなことを書いていきます。

 

                      Adieu Romantique No.620

             『POP SONGの魔法を信じるかい? Ⅳ 』

                      

さて、と。もう4回目になる『POP SONGの魔法を信じるかい?』の続き。夏の終わりから徐々に秋の気配を感じるような、ごく短い今だけの季節に似合うロマンティックな音楽を、ということで。


それにしても。僕が考える「POP SONG」は、毎回どんどん膨らんできている。「えっ、これってPOP SONGなの?」とか「これは絶対にPOP SONGじゃないだろう」というものまで。まぁ、もともと(以前にも書いたように)「POP SONG」の基準なんて何もないんだから僕が思うままにセレクトしていくしかないかなぁって思ってるけど(当たり前だぁーおーっ!)。少なくとも「あの頃の記憶」を鮮明に浮かび上がらせてくれるようなノスタルジックな音楽を、というところは基本に置いて。


そして最初は前回同様、POPな感覚を持った、アメリカのアニメーションのことから。


前回にPICK UPしたのはカートゥーンcartoonと呼ばれる子供向けのスラプスティックなアニメーションを代表したウィリアム・ハンナジョセフ・バーベラの作品だったけど、今回はそれと双璧を成したワーナー・ブラザーズが制作した「ルーニー・テューンズ」【Looney Tunes】のアニメーションを

ルーニー・テューンズのアニメーションはとにかくスピーディーで少々、毒を含んでる。前回に少し触れた「トムとジェリー」のように、捕食する側と捕食される側との終わりなき永遠の追いかけっこを繰り広げながら、結局、捕食する側がその目的さえ忘れてしまうという、意味があるようで意味などまるでないような。或いは意味がないようでどこかに意味があるような、そんな世界。


そしてそこに登場するキャラクターたちの個性的なことと言ったら。ビジュアル的には、とても可愛いくって、とてもチャーミングなのに、その性格は(あくまでも僕の主観による性格診断だけど)概ねイジワルで残酷で、無責任で自己中心的で。僅かにやさしいところも持っているけど無自覚で分裂症的で一瞬、狂気さえ感じることも(子供向けのアニメーションとしては情操教育的に問題あるんじゃないかと思ったり)。まぁ、そういったアニメーションとそれを観る側との距離はとても希薄で(故に観る側はキャラクターに感情移入できない)、現実感がなくて表層的、とてもカラフルでキッチュで、ある意味「POP ART」に近いのかも知れない。


ドキドキルーニー・テューンズの最高のスター、バックス・バニー【Bugs Bunny】


📺️バックス・バニーを狙う追跡者の、ヨセミテ・サム【Yosemite Sam】。顔中、赤眉毛と赤髭で覆われたカウボーイで、そのナンセンスなデフォルメがPOP。因みに。アメリカのロック・バンド、ZZトップこのヨセミテ・サムからのインスパイアじゃないのか、と思ったり。

📷️そのZZトップを。左がベースのダスティ・ヒル、右がギターとボーカルのビリー・ギボンズ

📺️最高にキュートなキャラクター、イエロー・バードが主人公の『トゥイーティー』【Tweety Bird】。同じ家に住む黒猫のシルヴェスターがいつもトゥイーティーを狙ってる。

📺️トゥイーティーの、歌声が聴けるシーンばかりを。


📺️『ロードランナー』【Road Runner & Wilee Coyote】は、ダチョウとコヨーテの、終わることのない永遠の追跡劇。そしていつも「ミーミー」という鳴き声と共に逃げるロードランナーを捕まえ損ねたワイリー・コヨーテが崖の上から落下してコヨーテの形通りに地面に埋まってしまうという結末が。



📺️その永遠の追っかけの1編を。


ドキドキ猛烈に好色な雄のスカンクが主役のアニメ『ペペ・ル・ピュー』【Pepe Le Pew】。可愛い女の子スカンクを見つけると、何の躊躇も恥じらいもなく、超高速ダッシュで駆け寄り、嫌がる女の子スカンクを抱きしめたり、頬を擦り寄せたり。セクハラ過ぎて今じゃ放映できないだろうなうーん


またしてもイントロダクションが長くなってしまった。そろそろ「POP SONG」の方を。


音譜前々回にもセレクトした(その時は1曲だけだったけど)エルトン・ジョン【Elton John】の曲をいくつか。まずは1970年のセカンド・アルバムからのシングル盤。絶対音感を持つ、その才能を世に知らしめた名曲『僕の歌は君の歌』【Your Song】から。この曲を聴くといつも思うんだな。彼は間違いなく「POP SONG」を自在に操る魔法使いだと。


音譜1973年のアルバム『ピアニストを撃つな!』【Don't Shoot Me I'm Only The Piano Player】からのシングル曲『ダニエル』【DANIEL】。因みにこのアルバムのタイトルはヌーヴェル・ヴァーグの映画作家フランソワ・トリュフォーが1960年に撮った『ピアニストを撃て!』

【原題:Tirez sur le pianiste 、英題: Shoot the Piano Player】の引用(だよね?)。


音譜1973年の2枚組アルバム『黄昏のレンガ路』【Goodbye Yellow Brick Road】からシングル・カットされた『土曜の夜は僕の生きがい~サタデイ・ナイト』【Saturday Night’s Alright For Fighting】


音譜1972年にリリースされた4thアルバム『Madman』から『可愛いダンサー』【Tiny Dancer】。この曲は2000年にキャメロン・クロウが撮ったロック・ムービー『あの頃ペニーレインと』の中で効果的に使われてた。


音譜The WHOのロック・オペラをケン・ラッセル映画化した『TOMMY』。その劇中に登場するPOP SONGの魔術師『ピンボールの魔術師』【Pinball Wizard】というPOP SONGを歌った(ソング・ライティングはThe WHOピート・タウンゼント)。


📺️時代を飛び超えるけど、とびっきりポップな「POP SONG」を。自らのバンド、バングルスでの活動と所謂プログレ・バンド、イエスをPOPに変身させたトレヴァー・ホーンが主宰した音楽レーベル「ZTT」から。1988年にリリースされたアート・オブ・ノイズ【Art Of Noise】と、1960年代後半から70年代初めにかけて活躍した大御所シンガートム・ジョーンズ【Tom Jones】とのコラボレートシングル曲『Kiss』を。



音譜単なる「POP SONG」とは言えない、絶対に言いたくない。そう。「POP」な感覚を持ったアーティストであり、ポップ・スターでもあったデヴィッド・ボウイ【David Bowie】のこと。そんな彼の1969年にリリースされたシングル『スペイス・オディティ』【Space Oddity】(日本盤シングルではデビッド・ボウイーと表記されてる)から。

音譜ボウイが1972年に放った傑作『ジギー・スターダスト』【Ziggy Stardust】から。シングル・カットされた『スターマン』【Starman】とアルバムのタイトル曲を。



音譜1973年のアルバム『アラディン・セイン』【Aladdin Sane】からのシングル曲『ジーン・ジニー』【The Jean Genie】


音譜1980年リリースのアルバム『スケアリー・モンスターズ』【Scary Monsters】からのシングル曲『ファッション』【Fashion】。この曲のボウイを見ると思うんだけど(今と昔を較べちゃいけないと思いつつ)、こんなにカッコいいパフォーマンスはもう誰にもできないのかな、って。ボウイがほんの少し動くだけで「ハッと」してしまうカッコよさ。音楽と完璧にシンクロしたり、アクロバティックに踊ることが必ずしもカッコいい訳じゃない、というような、まぁただの独り言ぶー

音譜ボウイが当時、大流行していたMTVを意識した、1983年の大ヒットシングル『レッツ・ダンス』【Lets Dance】


音譜ブライアン・フェリーを中心にブライアン・イーノアンディ・マッケイフィル・マンザネラグラハム・シンプソンポール・トンプソンによって活動を始めたロキシー・ミュージック【Roxy Music】が1973年にリリースしたセカンド・アルバム『For Your Pleasure』から。架空のダンス「ストランド」のことを歌った、POPでキャンプでスキャンダルでいかがわしい『ロキシー・ストランド』【Do The Strand】を。



ロキシー結成前にブライアン・フェリーキング・クリムゾンのボーカル・オーディションを受けていたという(同じ頃にエルトン・ジョンもそのオーディションを受けていたらしいけど)。まぁ結局二人共、ロバート・フリップのお眼鏡には叶わなかった訳だけど、もしどちらかがクリムゾンに入っていたらロックの歴史は少し変わっていたかも知れないなうーん。因みにエルトン・ジョンはその後、ロッド・スチュワートが抜けたジェフ・ベック・グループのボーカリストの話を受けようかどうか迷っていたという話も。

そしてこのセカンド・アルバムの頃のロキシーはスポークスマンのブライアン・フェリーよりも、奇抜なファッションでキーボードを操ったイーノに人気が集中してしまい、それが面白くなかったブライアン・フェリーは(自身が描いたバンドの音楽がやり難くなってしまったこともあって)結局、このセカンド・アルバムを最後にイーノを首にしてしまう。まぁ、ブライアン・フェリーのルックスや雰囲気を考えると少々ダンディー過ぎて、POPなイメージのイーノとは馬が合わなかった、っていうことで、それでいーのかな(イーノと掛けたシャレだよえー?)。

📷️ハデハデ、ケバケバ、イケイケのトリック・スターだったイーノ
音譜イーノが抜けた後、ロキシーが1975年にリリースしたアルバム『サイレン』【Silen】からのヒット曲『恋はドラッグ』【Love Is The Drug】。因みにイーノの代わりにバンドに参加したのはキング・クリムゾンの演奏にも加わったことがあり、後にU.K.を結成するエディ・ジョブソン


音譜ロキシーを脱退したイーノことブライアン・イーノ【Brian Eno】は、その後、クリムゾンの絶対者ロバート・フリップとコラボレートしたアルバムや、自らが立ち上げた「オブスキュア・レコード【Obscure Records】での活動と並行するように、とてもPOPな、いくつかのソロ・アルバムをリリースする。例えば1974年にリリースされたセカンド・ソロ・アルバム『Taking Tiger Mountain』から『Give You So Much More』

音譜1977年のソロ・アルバム『Before And After Science』から、とてもPOPな『Here He Comes』


音譜時代は60年代に遡るね。アーサー・リーが中心になり活動したバンド、ラヴ【Love】の、とてもPOPなんだけど、当時はほとんど売れなかったらしい1967年のアルバム『Forever Changes』から『Alone Again Or』。このアルバムは20年以上の時を経て、90年代に音楽マニアの間で注目を浴びることに。


音譜こちらも同じく。とても素晴らしい音楽なのに当時はほとんど売れなかったアルバムだけど。間違いなく魔法がかけられたカラフルなPOPワールドであり、まるで桃源郷のような世界が。コーラス・ワークの天才、カート・ベッチャーが中心になり結成されたミレニウム【The Millennium】の唯一のオリジナル・アルバム『ビギン』【Bigin】から『Prelude~To Claudia On Thursday』『I Just Want To Be Your Friend』、『5AM』、そして『Just About The Same』






音譜ラヴ・ジェネレーション【Love Generation】の、(何てステキなバンド名なんだろう)、1967年にリリースされたシングル曲『二人のサマータイム』【Groovy Summertime】。この曲が収められたアルバムのカヴァーもステキなのでUPしておくね。



音譜ニューヨーク・パンクの女王として知られてるパティ・スミス【Patti Smith】。だけど。彼女の音楽はよく聴くと結構POPだったり。ファースト・アルバム『ホーセズ』【Horses】の1曲目、ヴァン・モリソンゼム【Them】時代に書いた曲『グロリア』【Gloria】のオリジナリティ溢れるカヴァーを。因みに。このアルバムのカヴァー写真はパティのかつての恋人であり、天才写真家でもあったロバート・メイプソープが撮っている。そう、1960年代末から70年代の初め頃にかけて。彼女はメイプソープと共にPOP CULTUREの中心にいたのだ。

音譜1978年リリースのアルバム『イースター』【Easter】から。パティブルース・スプリングスティーンが共作した曲『ビコーズ・ビコーズ・ザ・ナイト』【Because The Night】

音譜トッド・ラングレンのプロデュースによる1979年のアルバム『ウェイヴ』【Waves】からのシングル曲。元MC5フレッド・スミスに贈った愛の歌『フレデリック』【Frederick】を。因みに。このアルバムのパティもロバート・メイプソープが撮った写真。いやぁ、美しい。


音譜それじゃぁ、ブルース・スプリングスティーン【Bruce Springsteen】の名曲も。Eストリート・バンドを引き連れて疾走した『明日なき暴走』【Bone To Run】クラレンス・クレモンスのSaxがやたらカッコいい。因みに。アルバムのカヴァーを撮影したのはエリック・メオラ



音譜ヒット曲を連発した、デボラ・ハリー率いるブロンディ【Blondie】の1979年リリースの大ヒット・ナンバー『ハート・オブ・グラス』【Heart Of Glass】。彼女のブロンドのようにキラキラと輝く、こんなキッチュな歌をデボラ・ハリー以外に歌える人はいないと思うな。


音譜ジャマイカのレゲエ・コーラス・グループ、パラゴンズによるロックステディの名曲カヴァー『夢みるNo.1』【The Tide Is High】。因みに。このシングル盤の写真でデボラ・ハリーが着ているのはアンディ・ウォーホルが1977年に撮ったBad Taste(つまり悪趣味)を極めた映画『BAD』T-Shirts。いゃぁ、彼女とウォーホルの、その繋がりもまた「POP CULTURE」なのだな。


音譜ガールズ・バンド、ザ・ランナウェイズ【The Runaways】の1976年の大ヒット曲(特に日本で)『チェリー・ボンブ』【Cherry Bomb】。何せ「ボム」ではなく「ボンブ」だ。ハードロックの残り香的な感じmeetsパンクと言えそうな。当時はボーカルのシェリー・カーリーばかりに人気が集中したけどバンド解散後はギターのジョーン・ジェットが活躍することに。因みにシェリー・カーリーは早々とバンドを抜けてソロ・アルバムを。そしてその後、双子の妹マリーとシェリー&マリー『初恋のふたり』をリリースしたもののあまりヒットしなかった。


音譜一発屋界のレジェンド(そんなのあるのかなぁうーん)、ザ・ナック【The Knack】が1979年に放った大ヒット『マイ・シャローナ』【My Sharona】は知ってる人が多いんじゃないかな。POPだしインパクトも十分だし。売れる要素が凝縮された、後のない奇跡の一発。


音譜ジグソー【Jigsaw】が歌ってヒットした『スカイ・ハイ』【Sky High】。もともとは『片腕ドラゴン』(1972)で日本でも人気があった香港カンフー映画のスター、ジミー・ウォングが主演した1975年の映画『スカイハイ』【直搗黄龍 / The Man From Hong Kong】の主題歌としてリリース。その後、プロレスラーのミル・マスカラスがリングに上がる時のテーマ曲に使ったことで一般的な人気を得た。


音譜イギリスのバンドパイロット【PILOT】の、1974年にリリースされた、「POP SONG」の魔法がかけられた曲、その名も『マジック』【MAGIC】


音譜エルトン・ジョンの人気を横目で見ながらデビューした「ピアノマン」(同じくピアノを弾き語るエルトンは自身をピアノマンとは言わずロケットマンと言ったにやり)、ビリー・ジョエル【Billy Joel】が1976年にリリースした(当時はあまり話題にならなかった)アルバム『ニューヨーク物語』【Turnstilesから『さよならハリウッド』【Say Goodbye To Hollywood】。ノスタルジックで胸がキュンとなる名曲だよね。

音譜そしてやっぱり。ビリー・ジョエルなら1977年にリリースされたアルバム『ストレンジャー』【The Stranger】だよね。アルバムからシングル・カットされたタイトル曲とソング・ライターとしての才能が光る『She’s Always A Woman』



音譜そして最後は。アルバム『ストレンジャー』の、最高にロマンティックな名曲『素顔のままで』【Just The Way You Are 】で締め括ることに。



それにしても、書けば書くほど混沌としてきている。そう。「POP SONG」の「POP」と単体で使われる「それってPOPだよね」の「POP」、或いは「POP CULTURE」の「POP」、「POP ART」の「POP」、さらには「Avant-POP」と呼ばれるアヴァンギャルドとの造語で1990年代の音楽や文学、映画に使われる「POP」や「POP ART」のパイオニアであるアンディ・ウォーホルが書いた著作『ポッピズム』【POPISM】の「POP」、村上龍が書いた小説『ラブ&ポップ』の「ポップ」、川勝正幸のエッセイ『ポップ中毒者の手記』の「ポップ」も含めてどこかどう違うのか、いや、もしかするとぜんぶ同じなのか、とか。まったくよく分からなくなってきている🤔(本来のポップの意味は、「一般的」とか「大衆的」とか。「飛び出す」とか「弾ける」とかも。因みにポップコーンの「ポップ」や販促物の「ポップ」は間違いなく後者の意味からだけど)

はてさて。これが必ずしも正解ではないにしろ、何かのヒントになると思いつつ、最後に元ピチカート・ファイヴ小西康陽の言葉を置いておくことに。曰く「アンディ・ウォーホルって、モータウンやストーンズ、シャングリ・ラスなんかのシングル盤によく似ている。そう、ウォーホルはぼくにとっては’’複製芸術のホームラン王’’って感じの人です」と。軽い感じだけど、よく分かるような気がするうーん


それじゃぁ、また

アデュー・ロマンティークニコ