Adieu Romantique No.605
架空美術展
『世界の イラストレーション・アーカイヴ Ⅱ 』
前回から書き始めた 架空美術展 『世界のイラストレーション・アーカイヴ 』 の2回目。
かつて。20世紀を代表する偉大なる芸術家、 マルセル・デュシャン 【Marcel Duchamp】 (1987~1968) は、 既成の男性用便器に 「R.MUTT1917」 というサインを入れただけの作品 (所謂、 レディメイド ) 『泉』【Fontain】 を美術展に出品し、スキャンダルを巻き起こした。デュシャン曰く 「それがアートだと言ったらアートだ」 と。
今回もまた アートとの明確な線引きなどはどこにもないイラストレーションの世界を僕なりに 便宜上カテゴライズして、その潮流を (厳密じゃないけど) 大まかな時間軸で追いながらキュレートし、スタイリッシュにEditしていくことに。 そう。それが例えアートであっても、なくっても。
🎨まさに変幻自在。 「それがアートであっても、なくっても」 。この人ほどその言葉が似合う人はいないんじゃないかな。フランシス・ピカビア【Francis Picabia】 (1879~1953)。マルセル・デュシャン 、マン・レイ と共にニューヨークの「DADA-ism」 を牽引し、既成の価値感に風穴を空け た 。
🎨ピカビア によるバレエ『本日休演』【Relache】 のためのイラストレーション。このバレエではエリック・サティ が音楽を担当(サティ最後の作品に)。1924年の初演は諸事情でほんとうに休演になったという。
🎨とにかく絵も上手い。
🎨まるでピタゴラスイッチ のような。
🎨偉大なる詩人、ギョーム・アポリネール【 Guillaume Apollinaire 】 (1880~1918)。詩を造形し、ある意味、イラストレーションにしてみせたカリグラム【 Calligramme 】 、『ネクタイと腕時計』 (部分)。🎨その日本語訳。
🎨『刺殺された鳩と噴水』 。戦争によって引き裂かれた友人たちを想う詩。噴水に例えた目から涙のように詩が吹き上げられている。
🎨マックスフィールド・パリッシュ【Maxfield Parrish】 (1870~1966)の、有名な 「夜明け」 から。この作品は1980年代に New Wave のバンド、 バウハウス の ピーター・マーフィー と JAPAN のベーシスト、 ミック・カーン のユニット、 ダリズ・カー のアルバム・カヴァーに使用された。
ダリズ・カーの音楽を、と思ったけど。僕が思う、「夜明け」の音楽はシリエ・ネス【Silje Nes】 の『Hello Luminanca』 。妖精が静かな朝を告げてくれる。
🎨色彩が素晴らしい1904年の作品『The Sugar Plum Tree』 。月明かりに照らされる、子供たちのイノセンス。とても不思議な世界を湛えてるよね。
スピリチュアルなサックス奏者、ファラオ・サンダース【Pharoa Sunders】 の 『Moon Child』 を。
🎨音楽家であり、歌手であり、ダンサーであり、パントマイム芸人であり、詩人であり、アーティストであったアラステア【 Alastair 】 こと、ハンス・ヘニング・フォークト【Hans Henning Voigt】 (1887~1969) の作品を。この人の作品も月明かりがよく似合う。
🎨エルテ【Erté】 こと、ロマン・ド・ティルトフ (1892~1990)はロシア生まれのフランス人。所謂ファッション・イラストレーターの元祖になるのだろうか。1900年代初頭、当時のモードを幻想的かつ美しく描き、高い人気があった。
🎨 フランスのイラストレーター。 ジョルジュ・バルビエ【Gorge Barbier】 (1882~1932)。1900年代初頭のファッションや風俗がとても魅力的に描かれていて、ジャポニズム (日本趣味)やシノワズリ (中国趣味)に寄った作品も多い。
🎨デンマークのイラストレーター、ケ イ・ニールセン【Kay Nielsen】 (1886~1957)の作品を。物語的な構図に淡い色彩を配した、とても美しくロマンティックな作品群は、日本の少女マンガにも大きな影響を与えてるんじゃないかな。
🎨ファッション雑誌「VOGUE」 の表紙をたくさん描いたジョルジュ・ルパップ【Georges Lepape】 (1887~1971)の作品を。
🎨フランスのアール・デコ のイラストレーター、シャルル・マルタン【 Charles Martin】 (1884~1934)。
🎨20世紀初頭に フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティ によって宣言された新しい芸術、思想の傾向を示した「イタリア未来派」【 Futurismo】 の画家であり、デザイナーでもあったフォルトゥナート・デペーロ【 Forturato Depero 】 (1892~1960)の作品を。
細野晴臣 の、1982年にリリースされたソロ・アルバム『フィル・ハーモニー』 から、1880年のイタリアで(当時では珍しい)登山電車のCMソングとして制作された曲のテクノ化、故に未来派な感じがする『フニクリ・フニクラ』 を。VIDEO
🎨フランスのイラストレーター、レオン・ベニーニ【Leon Benigni】 (1892~1942)の作品。
🎨ファッション雑誌「VOGUE」 と長期契約していたアメリカのファッション・イラストレーター、ジョージ・ウルフ・プランク【George Wolfe Plank】 (1883~1965)の作品を。 🎨1922年のアメリカで「ジャズ・エイジ」 の誕生を告げたスコット・フィッツ・ジェラルド の短編集『Tales of the Jazz Age』 の表紙を描いたイラストレーター、ジョン・ヘルド・ジュニア【John Held Jr.】 (1889~1958)。彼のユーモア溢れた作品はアメリカの有名な雑誌「LIFE」 の表紙も数多く飾っている。
🎨1918年にブラジルで創刊されたアール・デコ の雑誌『Para Todos』 の表紙を描いたイラストレーター、ホセ・カルロス・デ・ブリト・エ・クーニャ【 José Carlos de Brito e Cunha 】 (1884~1950)のオシャレで可愛い作品を。
🎨1930年に。既にポップ・アートを先取りしてるよね。
🎨1920年代に活躍したメキシコのアール・デコのイラストレーター、エルネスト・ガルシア・カブラル【Ernesto Garcia Cabral】 (1890~1968) のモダンな作品を。先のホセ・カルロス もそうだけど、イラストレーションの潮流は決してヨーロッパだけのものではないのだな🤔。
🎨大正から昭和の初め頃にかけて。日本の少年少女に人気があった、高畠華宵【Kasho Takabatake】 (1888~1966)の作品。
🎨妖精画を得意としたアメリカの女流画家、ドロシー・P.ラスロップ【Drothy P.Lathrope】 (1891~1980)の作品をいくつか。
🎨アメリカの女流画家、 ヴァージニア・フランシス・ステレット【Viriginia Frances Sterrett】 (1900~1931)の作品を。
🎨日本のイラストレーションを。島崎藤村 と画家の有島生馬 が監修した1919年創刊の童謡童話雑誌「金の船」 や1922年に創刊された 「コドモノクニ」 の表紙を描いたイラストレーター、岡本 歸一 【Kiichi Okamoto】 (1888~1930)の作品。因みに。ぬりえで有名な蔦屋喜一 とは別人。
🎨イラストレーターとして括りにくいけど。自らも当時のファッション・リーダーであった女性画家タマラ・ド・レンピッカ【Tamra de Lempicka】 (1898~1980)のファッショナブルな作品を。
📷️彼女自身もとてもファッショナブルな女性だった。
🎨 現代に通じるファッション・イラストの源流。 ルネ・グリュオー【 René Gruau 】 (1909~2004)。1940~50年代に 「マリ・クレール」 や 「ヴォーグ」 誌に数多くのファッション・イラストを描き、高い人気を誇った。
🎨アメリカの、ユーモアに溢れ、幸福感に満ちたイラストレーションの源流、ノーマン・ロックウェル【Norman Rocwell】 (1894~1978)の作品を。
🎨松本かつぢ【Katsuji Matsumoto】 (1904~1986)が描いた「KAWAII」 の極北。
🎨天才画家、アンリ・マティス【Henri Matisse】 (1869~1954)が晩年に制作した作品、線と色彩を純化した「ブルーヌード Ⅱ」 や切り絵の「ジャズ・シリーズ」 はある意味、イラストレーションやグラフィック・デザイン的だとも捉えることができるんじゃないかな🤔。
🎨現在へと続くイラストレーションに影響を与えたアメリカのベン・シャーン【Ben Shahn】 (1898~1969)。
🎨イタリアのミラノで活躍したグラフィック・デザイナーであり、プロダクト・デザイナーであり、絵本作家でもあったブルーノ・ムナーリ【 Bruno Munari 】 (1907~1998)のユーモアに溢れた不思議な作品をいくつか。
🎨レイモン・ペイネ【Raymond Peynet】 (1908~1999)が描いた、恥ずかしいくらいメルヘンしてる愛の世界。
🎨現在に繋がるグラフィック・イラストレーションに多大な影響を与えたフランスのイラストレーター、レイモン・サヴィニャック【Raymond Savignac】 (1907~2002)の作品を。
🎨トレーディング・カードやコミックなどで活躍したノーマン・サンダース【Norman Sanders】 (1907~1989)。1982年に画家宣言をしてからの横尾忠則 に影響を与えてるような気がするな 。 🎨 音楽とイラストレーションの出会い。 ジャズのアルバム・カヴァーを数多く手掛けたデヴィッド・ストーン・マーチン【David Stone Martin】 (1913~91)の作品を。
🎨チャーリー・パーカー とディジー・ガレスビー の
1952年リリースのアルバム『BIRD and DIZ』 のアルバム・カヴァー。抜群のセンスだよね。
🎨1945~46年に録音されたビリー・ホリデイ のアルバム『at Jazz at The Philharmonic』 も。
🎨ジャズ・ギタリスト、タル・ファーロウ の1954年のアルバム『 The Tal Farlow Album』 。とにかく「線」に説得力があるよなぁ。
🎨最高に涼しげなスタン・ゲッツ の1955年のアルバム『WEST COAST JAZZ』 の、Coolなアルバムカヴァーも。
🎨 典型的な乙女イラストで人気があった、 勝山ひろし【Hiroshi Katsuyama】 の作品。
🎨ファッション雑誌「それいゆ」 や「ひまわり」 、「ジュニアそれいゆ」 を創刊し、表紙も描いた日本のファッション・イラストの草分け、中原淳一【Junichi Nakahara】(1913~1983) 。
🎨彼が1939年に描いた作品。ガーリーでオシャレで、何だかカッコいいけど。ギタールってどうよ。
それじゃぁ、ギタールな感じがする音楽を勝手に。
ブリジット・フォンテーヌ と
ジャック・イジュラン のデュエット曲
『La Grippe』 。
🎨 日本の伝統的な少女イラストに影響を受けながら、それを転換させて、オリジナルを生み出したイラストレーター、 内藤ルネ【Rune Naito】 (1932~2007)。現在では ファッションイラストである以上に世界に認められた「KAWAII」 を代表する。
🎨彼の絵も中原淳一 の 「ジュニアそれいゆ」 の表紙を飾った。
🎨フィンランドのファンタジー作家でもある、トーベ・ヤンソン【Tove Jansson】 (1914~2001)。ムーミン谷 のキャラクターに囲まれた作品。
🎨ファッション・イラストレーター界の重鎮、アル・パーカー【Al Parker】 (1906~1985)。1940年代から50年代にかけて活躍した、幸福だった時代のアメリカを象徴するイラストレーション。
🎨コビー・ウィットモア【Coby Whitmore】 (1913~1988)の作品も。
🎨 ジャック・ポッター【Jack Potter】 (1927~2002)。 コカ・コーラ の広告で人気が拡大した。アル・パーカー と同じく50年代的で、当時のアメリカの生活が浮き上がってくる。但し、中流階級以上の、ね。
🎨フランスのイラストレーター、ジャン=ジャック・サンペ【Jean Jaques Sampe】 (1932~2022)。アメリカの人が描かないような世界だよね。
🎨フィル・ヘイズ【Phil Hays】 (1931~2005)の作品を。1950年代くらいにアメリカで描かれたイラストレーションは独特のテイストがあって、みんな絵が上手い。
🎨マイルス・デイヴィス が1955年に契約上の問題で、プレスティッジ に1956年内に4枚のアルバムを出す必要が生じ、たった2日で録音した(マラソン・セッション と言う) 4部作の内の1枚『COOKIN'』 。4枚の中でも最高傑作だと言われる、その名盤のカヴァーはフィル・ヘイズ が描いた。
このアルバムから名曲『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』 を。メンバーはマイルス 以下、ジョン・コルトレーン (ts)、レッド・ガーランド (p)、ポール・チェンバース (b)、フィーリー・ジョー・ジョーンズ (ds)。不滅で無敵な演奏で今回の記事を締め括ることに。VIDEO
今回の記事を書いていて思うのはイラストレーションの可能性と限界みたいなこと。いや、違うな。イラストレーションを通して逆説的に僕は「アートとは何か?」というようなことを漠然と書いているのかも知れない。
そういうことで、イラストレーションのアーカイヴは次回へと続く。