Adieu Romantique No.600
『☔雨の休日には…』
最近は。過去の記事の焼き直しが多いような気がしている。テーマやセレクトする音楽やアートも同じものを引っ張り出してくることが増えてきてるな、と。まぁ、言い訳が許されるなら。6年近くの間に今回で600回目になる記事を書いている訳だし、(いろんなコトに影響を受け、いろんなコトにインスパイアされてきたとしても)ひとりの趣味嗜好や思考や志向で書いているのだから、イメージが膨らまなくなってシュリンクしてしまったとしても、それはそれで仕方がないとも思う。
だけど、そうは言いながらも。同じような記事を書きつつも、少なくとも過去に書いた記事とまったく同じじゃやっぱりツマラナイ。例え過去の記事の焼き直しであっても、そこに大幅に加筆し、ところどころにその都度の感情や想いを入れて、音楽やアートを入れ替えたりしながらRe-Editしていこうと思っている。
そのようなことで今回のタイトルは
『☔ 雨の休日には…』。
☔もう間もなく梅雨入りしていくのかな。だけど。雨が多いからといって気分まで落ちる必要はないよね(低気圧の影響で体調が悪くなってしまうような人には、そんな簡単に言うことはできないのでそこはゴメンナサイ)。まぁ、できるなら雨が降り続く休日には「雨と戯れる」、そんな感じで。家の中で音楽を聴いたり、映画を観たり、本を読んだり、画集や写真集を眺めたりしながら1日を過ごすのも悪くはないと思う。
まぁ、今回は。幸いなことにYouTubeから音楽の直接の貼り付けができるようになったことも含め、できる限りたくさん雨の日が似合う音楽(ほんとうは雨音だけでも十分なのかも知れないけど)をセレクトしていくね。
早速、音楽を。1995年にバーミンガムで、ヴォーカリストのトリッシュ・キーナン(2011年に急逝)とベーシストのジェイムズ・カーギルによって結成された
ブロードキャスト【Broadcast】の、1997年にイギリスのテクノ・レーベル『WARP』からリリースされたアルバム『Work and Non Work』から『Accidental』、『The Book Lovers』、『Massage From Home』を。雨が降る日に似合うキーワードは3つ。「メランコリー」、「ノスタルジー」、そして「ロマンティーク」。当時、よく聴いていた彼らの音楽にはそのすべてが詰まってる。
🎨雨が降る日には、ひとり雨の中で佇んだり。コーリー・エグベルト【Corey Egbert】のイラストレーション。
雨の休日には。谷川俊太郎が書いた詩を読んだり。
『静かな雨の夜に』
静かな雨の夜に
いつまでもこうして坐って居たい
新しい驚きと悲しみが
静かに沈んでゆくのを聞きながら
神を信じないで
神のにおいに甘えながら
はるかな国の街路樹の葉を
拾ったりしながら
過去と未来の幻燈を浴びながら
青い海の上の柔らかなソファを信じながら
そして なによりも
限りなく自分を愛しながら
🎨窓の外に降る雨をただ眺めてみたり。
もしかすると聴く人によっては余計にイライラする音楽かも、だけど。僕はこの曲が大好き。雨の中に自分が入り込んだり、自分の中に雨が染み込んでくるような気がするんだ。ミニマル・ミュージックの巨匠スティーヴ・ライヒ【Steve Reich】の【It's Gonna Rain】。
雨の休日には。谷川俊太郎の詩に呼応するように。雨の詩を書いてみたり。
『静かな雨の夜には』
雨が降っている
空から降る雨は
やがて地面に吸い込まれ
また空から
雨を降らしている
雨は時間軸を持たず
ただ繰り返す
静かな雨の夜には
僕は過去の自分を想像し
未来の自分を懐かしむ
僕が生まれてくる日のことや
大好きな彼女と
初めてKISSを交わす瞬間のことや
手を繋いで指を絡めて離さなかったことや
僕が死んでしまった日のことを
雨は永久運動のように
始まりも終わりもなく
連続しているのだ
雨が降っている
レインドロップが奏でる
大古の歌を
柔らかなソファに身を沈めながら
僕はただ
耳を澄ましてじっと聴いている
そのようなことで。何だかNHKの、GONTITIのMCによるFM番組『世界の快適音楽セレクション』みたいだけど。「雨の休日には…」をテーマに、敢えてそういう音楽ばかりをセレクトしてみた。
ビートルズ解散後、天才ポール・マッカートニーが迷いながら、手探りで自分自身を晒した、1971年のセカンド・ソロ・アルバム『RAM』から。ウクレレの調べに導かれて雨の休日が楽しくなる予感に包まれる、そんな曲『Ram On』を。
例えどんな曲を歌ってもすべてが唯一無二のオリジナルになってしまうニーナ・シモン【Nina Simone】。彼女の、1969年リリースのデビュー・アルバムから『Little Girl Blue』。彼女の歌を聴いていると、グレーとか透明というより雨の日はやっぱりブルーがよく似合うと思う。
もう1曲、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを。1969年リリースのサード・アルバムから、モーリン・タッカーが歌う『After Hours』。「雨の中 憂鬱な表情を浮かべて不安気に佇んでいる それでも暗闇の中ではみんな美しく見えるものね」と歌われる、何気ないけどとても可愛くて素敵な曲。
ニーナ・シモンのチルドレンとも言える、ジャズ・シンガー、カサンドラ・ウィルソン【Cassandra Wilson】の2002年のアルバム『Belly For The Sun』から、ザ・バンドの名曲のカヴァー『The Weight』。
もう1曲、マッシヴ・アタック【Massive Attack】を。1994年にリリースされたセカンド・アルバムからシングルカットされたタイトル曲『Protection』。ボーカルにはエヴリシング・バット・ザ・ガールのトレーシー・ソーンを迎えた。
こちらもブリストル発。マッシヴ・アタックと肩を並べるスミス&マイティが全面協力したカールトン【Carlton】の1990年のアルバム『The Call Is Strong』から『Do You Dream』。
ジャマイカで活動した後、ブリストルに移りマッシヴ・アタックともコラボレートしたレゲエ・シンガー、ホレス・アンディ【Horace Andy】の1995年の曲『In The Light』と、プリンス・ジャミーによる 『In The Light Dub 』のDisco Mix。
📷️雨とは直接、関係ないけど。イノセンスを感じる少女たちの、こんな写真を眺めるのもいいなぁ、と思うダラ・スカリー【Dara Sucully】の作品。
アルゼンチン音響派の異才、モノ・フォンタナ【Mono Fontana】の2007年のセカンド・アルバム『cribas』から『Cancion de la Memoria』。遠い記憶の中をさ迷うような曲。
フリー・ジャズのサックス奏者、アーチー・シェップの傑作アルバムのタイトルをそのまま引用した、アッティカ・ブルース【Attica Blues】の、Hip-Hopの名門レーベル「MO'WAX」から1995年にリリースされたアルバムから『Blueprint』。
矢部直、松浦俊夫、ラファエル・セバーグによる鉄壁のDJトリオ、U.F.O.ことUnited Future Organizationの『Nemurenai-Insomnia』。彼らはDJでも優れてオリジナルな音楽が創れることを証明し、90年代的カッコ良さを体現してみせてくれた(今、聴いても十分にカッコいいけどね)。
1988年にデビューしたエレクトライブ101【Electribe101】のデビュー・アルバムであり、U.K.Soul、U.K.ガラージュの名盤(と僕は思う)『Electribal Memories…』は当時、とても新しく、しかもその音楽は既に完成されていた。それもそのはず、そこには1980年代、シカゴの伝説のゲイ・クラブ「ウェアハウス」のDJとして後のハウスの原型を創ったフランキー・ナックルズやラリー・ハードによるMix Takeが挿入されていて、紅一点のビリー・レイ・マーティンの青い炎のようなボーカルと見事に感応し合っていた。アルバムの中からミニマルなMixがエキセントリックでたまらなくカッコいい『You're Walking』〈 Corporate Def Mix〉を。
ポール・ウィリアムズとロジャー・ニコルズによる名曲をカーペンターズ【Carpenters】が歌った『雨の日と月曜日は』【Rainy Days And Mondays】。ほんと、しっとりした素敵な曲だよね。
ビートルズが1966年にリリースしたシングル『ペイパーバック・ライター』のB面。中期から後期にかけて、最もビートルズらしい曲のひとつだと思っている『レイン』【Rain】。
🌂雨が止んで、太陽が顔を覗かせたなら。こんな曲を聴きながら散歩をしたり、昭和の香りがする喫茶店で冷たいアイス・コーヒーを飲んだりして時間を潰すのもいいかも知れない。ジョージ・ハリスンが書いたビートルズの曲『Here Comes The Sun』をニーナ・シモンのカヴァーで。
それじゃぁ、
今回はこの辺で。
アデュー・ロマンティーク