Adieu Romantique No.571『映画と映画音楽を語るときに僕の語ること』 | 『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

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僕が過去と現在、ロマンティークと感じた(これから感じることも)恋や音楽、映画、アートのいろいろなことを書いていきます。

 

 

 

                  Adieu Romantique No.571

   『映画と映画音楽について語るときに僕が語ること』

               【映画が先か、音楽が先か編①】

 

僕自身の映画的記憶を呼び覚ますように。新しい年が明けても書き続けているシリーズ記事映画と映画音楽について語るときに僕が語ること』の8回目。ここにきてサブ・タイトルがよく分からなくなってきた。まぁ、取り敢えずは【映画が先か、音楽が先か編①】。いずれにしても。僕の記憶の中にある、素敵な映画と素敵な音楽との幸福な出会いであることに何ら変わりはない。


📖まずはいつも(とても都合よく)手元にある映画について書かれた一冊の本のことから。シリーズ1回目は村上春樹川本三郎「映画をめぐる冒険」、2回目は和田誠『シネマッド・ティー・パーティ』、3回目は植草甚一『映画はどんどん新しくなってゆく』、4回目は蓮實重彦【Shigehiko Hasumi】『映画の神話学』、5回目は山田宏一『友よ映画よ わがヌーヴェル・ヴァーグ誌』。6回目は菊地成孔【Naruyoshi Kikuchi】ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本〈ディレクターズ・カット版〉【La bande sonore de Jung】、前回は「一冊の本」じゃなく、ピチカート・ファイヴ小西康陽が映画について書いた、その言葉を散りばめた。そして今回は。80年代末頃以降から現在に至るまで映画、音楽、文学、カルチャーについて、その枠組みを自由に横断してきた映画・音楽・文芸評論家、佐々木敦『映画的最前線1988-1993』のこと。


映画批評の中に音楽を散りばめ(ドイツのジャズ・レーベル「ECM」の音楽のことからダニエル・ジョンストンまで!)、映画と音楽が同列に語られた映画評論であり、映画評論でありながら全体的にどこか音楽的な感じがして、初めて読んだ時は目から鱗がこぼれ落ちた覚えが。当時の僕が待ち望んでいた(今では普通なのかも知れないけど)、所謂、映画と音楽の垣根を超えた映画評論にようやく出会えたような気がした。

 

🎦まずは。佐々木敦と切っても切れないと思える映画から。『ステップ・アクロス・ザ・ボーダー』【Step Across The Border】(1989)。元ヘンリー・カウのメンバーであり、プリペアード・ギターという実験的な奏法でソロ・アルバムをリリースしていたフレッド・フリスが世界中を移動し、そこで出会うミュージシャンたちとコラボレートする、まるでヴィム・ヴェンダースが撮ったロード・ムービーのようなドキュメンタリー映画である。当時の佐々木敦は映画評論で活躍しつつ、音楽雑誌で音楽レビューも書いていた。そして彼がレビューを書くアルバムはいつも、この映画に流れているようなアヴァン・ポップ(アヴァンギャルド+ポップ)と呼ばれた音楽であり、そのレビューの10点満点の採点では常に8~10点を付け、軒並み「大傑作!」とか「全人類必聴!」などと大袈裟過ぎる言葉で賛辞を送っていたことを思い出す。ジョン・ゾーンクリスチャン・マークレー、デレク・ベイリーなど、当時、陽の当たらなかった音楽を(今でも当たっていないけど)何とかできるだけ多くの人に聴いてもらおうと奮闘していたような気がするし、少なくとも僕は彼の影響を受けて、そういった音楽を聴きまくっていた。


音譜映画の中で流れたフレッド・フリス【Fred Frith】による『Sparrow Song』を。


🎦当時、佐々木敦はこの映画も推していた。NYインディーズの映画作家ハル・ハートリーが1992年に撮った、スタイリッシュな映画『シンプルメン』【Simple Men】。おかっぱヘアーのエレナ・レーヴェンゾーンが主演のふたりを従えてソニック・ユースのアルバム『GOO』に収められていた曲『Kool Thing』で踊るシーンを。因みに。このシーンはジャン=リュック・ゴダール『はなればなれに』【Bande a Part】(1964)でアンナ・カリーナサミー・フレイクロード・ブラッスールが踊るシーンをリスペクトした映画的引用である。


🎦スタイリッシュを極めた『はなればなれに』のダンス・シーンもUPしておくね。


🎦雰囲気をがらりと変えて。季節外れだけど1958年の夏にロードアイランド州ニューポートで開催された「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」のドキュメンタリー映画『真夏の夜のジャズ』【Jazz On A Summer's Day 】。監督はマリリン・モンローの数々の魅力的なポートレイトを撮った写真家のバート・スターンここには50年代アメリカの最良の部分がスタイリッシュ&ロマンチックに記録されている。

🎦ジミー・ジュフリーが吹くSaxの音色が心地いい『The Train And The River』が流れるタイトルバックを。

🎦とにかく。会場に来ているオーディエンスたちのオシャレなことといったら。まるですべてが映画の1シーンのよう(そう。すべてが映画の1シーンなのです)。
🎦まだ日が暮れていない時間に演奏されるセロニアス・モンク【Thelonious Monk】『Blue Monk』。因みに。若い頃からジャズに並々ならない情熱を注いできた村上春樹はセロニアス・モンクについてこんな風に語っている。「濃いブラック・コーヒーと、吸いがらでいっぱいになった灰皿と、JBLの大きなスピーカー・ユニット、読みかけの小説(たとえばジョルジュ・バタイユ、ウィリアム・フォークナー)、秋の最初のセーター、そして都会の一角での冷ややかな孤独  そういう情景は、僕の中では今でもまっすぐにセロニアス・モンクに結びついている」と。

🎦アニタ・オデイがHotでCoolな(どっちやねーんおーっ!)スタイリッシュな歌を聴かせてくれる。『Sweet Georgia Brown』『Tea For Two』


🎦そしてもう1本。後にハンニバル・レクター・シリーズの第1作目『羊たちの沈黙』を撮るジョナサン・デミデヴィッド・バーン率いるトーキング・ヘッズLiveの模様を収めたドキュメンタリー『Stop Making Sense』デヴィッド・バーンの、インテリジェンスとパッション、そしてアーティスティックなクリエイションが渾然一体になった、そのパフォーマンスはいつ観ても圧倒的。因みに。公開当時、ポスターには「なぜ、大きなスーツ?」という思わせぶりなコピーが付けられていた。

🎦Openingの曲『Psycho Killer』スニーカーでリズムを取り始め、アコギ1本でさらにリズムを刻みながら次第に上がっていくGroove感、高揚感の素晴らしさ。

🎦3曲目の『Thank You For Sending Me An Angel』で、早々とそのパフォーマンスは全開に。

🎦『Girlfriend Is Better』「なぜ、大きなスーツ?」の答えが。


🎦レゲエの映画の基本。ベリー・ヘンゼルが1973年に撮ったルード・ボーイの映画、『ハーダー・ゼイ・カム』【The Harder They Come】。主役の、ジミー・クリフのヤバい感じが最高にイカしてた。
音譜ジミー・クリフが歌ったテーマ曲を。

音譜The Slickersの名曲『Johnny Too Bad』も流れた。


🎦レゲエ・ムービーの流れで。僕自身もクイーンの映画(フレディ・マーキュリーの伝記映画)『ボヘミアン・ラプソディ』を観て以来、(次はこの人の映画しかないと思って)何年も前からずっと待ち望んだボブ・マーリーの伝記映画『One Love』が今年、遂に公開される。
🎦その予告編を。主役を演じるキングズリー・ベン=アディルよりもボブ本人の方が遥かにカッコいいのは間違いないけど(そんなの当たり前だ)、そこは敢えて言う必要はない。マーリーが全身全霊で放った「Positive Vibration」、或いは「One Love , One Heart」(ジョンとヨーコ「Love & Peace」と同じだ)をどんな風に感じ取れるのか。いやぁ、ほんとうに楽しみで仕方ないや笑い泣き


🎦ピーター・フォンダが監督、主演を務め、デニス・ホッパージャック・ニコルソンがデビューした、当時の若者の、若者による若者のための映画『イージー・ライダー』【Easy Rider】「反体制」とか「自由」とか「サイケデリック」とか「快楽」とか。そんないろんなものを抱えた映画はニューシネマと呼ばれ、当時のアメリカの閉塞した状況を描き出した。

🎦チョッパー・バイクに跨がって疾走したピーター・フォンダの役名は「キャプテン・アメリカ」。いゃぁ、カッコいいなぁ。
🎦この映画にはやっぱりこの曲でしょ。ステッペン・ウルフ『ワイルドで行こう』【Born To Be Wild】が流れるシーンを。


🎦バイク繋がりで。もっともこっちは可愛いイタリア製のヴェスパ【Vespa】だけど。イギリスの、ロンドン~ブライトンを舞台にモッズロッカーズの争いを描いた『さらば青春の光』【Quadrophenia】。同じ名前の漫才コンビもこの映画のファンなのかなぁうーん因みに。もともとはThe Whoのアルバム『四重人格』【Quadropheniaからインスパイアされた作品。フィル・ダニエルズが演じたジミーの、四重人格っぷりが青春の光と影を映し出す。
🎦モッズのグループのヘッド役はスティングが演じた(ポール・ウェラーの方が似合っていたかも、だけど)。
モッズ【Mods】。ヴェスパに乗って。The Whoのロゴを(或いはThe Jamの)背中にレイアウトしたモッズ・コートを着た人たちが当時、僕の周りにも何人かいた。恋とか人間関係とか、自分自身とか。いろんなことに悩みながら、それでもみんなこの映画に影響を受けて、カッコよくキメていた。
🎦The Who『Real Me』が流れるTrailerを。


音譜この映画に主演したフィル・ダニエルズ【Phil Daniels】は自身のバンド、The Crossを結成し『Kill Another Night』をヒットさせた。

🎦ベル・アンド・セバスチャンスチュアート・マードックが結成したGirlyなバンド、God Help The Girlのアルバムを自らが映画化した『God Help The Girl』拒食症で入院中のイヴが病院を抜け出しライブハウスで出会ったジェームズ、キャッシーとバンドを結成するというようなお話。70s的でとってもキュート!
音譜そのサウンド・トラック盤のMV(つまり映画のTrailer)から。主演したエミリー・ブラウニングが歌う『God Help The Girl』を。


 
今回は「いゃぁ、映画を観ながら音楽を聴き、音楽を聴きながら映画を観るって、本当にいいもんですね」と言っておきたくなった(水野晴郎はそんなことは言わなかったけどね)
 
じゃあ、また
アデュー・ロマンティークニコ