🎦まずは。佐々木敦と切っても切れないと思える映画から。『ステップ・アクロス・ザ・ボーダー』【Step Across The Border】(1989)。元ヘンリー・カウのメンバーであり、プリペアード・ギターという実験的な奏法でソロ・アルバムをリリースしていたフレッド・フリスが世界中を移動し、そこで出会うミュージシャンたちとコラボレートする、まるでヴィム・ヴェンダースが撮ったロード・ムービーのようなドキュメンタリー映画である。当時の佐々木敦は映画評論で活躍しつつ、音楽雑誌で音楽レビューも書いていた。そして彼がレビューを書くアルバムはいつも、この映画に流れているようなアヴァン・ポップ(アヴァンギャルド+ポップ)と呼ばれた音楽であり、そのレビューの10点満点の採点では常に8~10点を付け、軒並み「大傑作!」とか「全人類必聴!」などと大袈裟過ぎる言葉で賛辞を送っていたことを思い出す。ジョン・ゾーンやクリスチャン・マークレー、デレク・ベイリーなど、当時、陽の当たらなかった音楽を(今でも当たっていないけど)何とかできるだけ多くの人に聴いてもらおうと奮闘していたような気がするし、少なくとも僕は彼の影響を受けて、そういった音楽を聴きまくっていた。
🎦当時、佐々木敦はこの映画も推していた。NYインディーズの映画作家ハル・ハートリーが1992年に撮った、スタイリッシュな映画『シンプルメン』【Simple Men】。おかっぱヘアーのエレナ・レーヴェンゾーンが主演のふたりを従えてソニック・ユースのアルバム『GOO』に収められていた曲『Kool Thing』で踊るシーンを。因みに。このシーンはジャン=リュック・ゴダールの『はなればなれに』【Bande a Part】(1964)でアンナ・カリーナとサミー・フレイ、クロード・ブラッスールが踊るシーンをリスペクトした映画的引用である。
🎦雰囲気をがらりと変えて。季節外れだけど1958年の夏にロードアイランド州ニューポートで開催された「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」のドキュメンタリー映画『真夏の夜のジャズ』【Jazz On A Summer's Day 】。監督はマリリン・モンローの数々の魅力的なポートレイトを撮った写真家のバート・スターン。ここには50年代アメリカの最良の部分がスタイリッシュ&ロマンチックに記録されている。
🎦ジミー・ジュフリーが吹くSaxの音色が心地いい『The Train And The River』が流れるタイトルバックを。
🎦そしてもう1本。後にハンニバル・レクター・シリーズの第1作目『羊たちの沈黙』を撮るジョナサン・デミがデヴィッド・バーン率いるトーキング・ヘッズのLiveの模様を収めたドキュメンタリー『Stop Making Sense』。デヴィッド・バーンの、インテリジェンスとパッション、そしてアーティスティックなクリエイションが渾然一体になった、そのパフォーマンスはいつ観ても圧倒的。因みに。公開当時、ポスターには「なぜ、大きなスーツ?」という思わせぶりなコピーが付けられていた。
🎦その予告編を。主役を演じるキングズリー・ベン=アディルよりもボブ本人の方が遥かにカッコいいのは間違いないけど(そんなの当たり前だ)、そこは敢えて言う必要はない。マーリーが全身全霊で放った「Positive Vibration」、或いは「One Love , One Heart」(ジョンとヨーコの「Love & Peace」と同じだ)をどんな風に感じ取れるのか。いやぁ、ほんとうに楽しみで仕方ないや。
🎦ベル・アンド・セバスチャンのスチュアート・マードックが結成したGirlyなバンド、God Help The Girlのアルバムを自らが映画化した『God Help The Girl』。拒食症で入院中のイヴが病院を抜け出しライブハウスで出会ったジェームズ、キャッシーとバンドを結成するというようなお話。70s的でとってもキュート!
そのサウンド・トラック盤のMV(つまり映画のTrailer)から。主演したエミリー・ブラウニングが歌う『God Help The Girl』を。