Bar Adieu Romantique No.008 『Boy Meets Girl』。 | 『アデュー・ロマンティーク』~恋とか、音楽とか、映画とか、アートとか、LIFEとか~

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僕が過去と現在、ロマンティークと感じた(これから感じることも)恋や音楽、映画、アートのいろいろなことを書いていきます。

 僕の架空音楽バー

『Bar Adieu Romantique』へ、ようこそ。

 

『Bar Adieu Romantique』ではお越しいただいた方に毎回、ご挨拶代わりに僕の独り言【Monologue】を書いたFree Paperをお渡ししている。

 

           Romantique Monologue No.008

                     『Boy Meets Girl

                 

独り言の最初の言葉を。

つまり「Boy Meets Girl」の物語は永遠である、と。


もちろん僕はもはや「Boy」ではないけど。今でもその「永遠」を追いかけ、「BoyとGirlはどんな風にして出会えばいいのか?」という問いに対して時々、理想的な「Boy Meets Girl」の物語のプロットを考えてしまう。

 

季節は夏がいい。太陽の熱が和らぎ、心地いい風が吹いてくる午後5時近く。

 

ある夏の日の夕方、男の子が海辺でひとりの女の子と出会う。二人共、特に目立った個性がある訳ではないけど、顔立ちもファッションも、どちらかと言えば割とお行儀のいい感じがする「男の子」と「女の子」。女の子は夏休みを利用してお爺ちゃん、お婆ちゃんの住む田舎にひとりで遊びにきていて、2週間、ここに滞在すると言った。

 

男の子はその女の子と明日も同じ時間にこの場所で会うことを約束する。次の日に女の子は「田舎ってとても過ごしやすいけど、少し退屈かな」って、はにかむように微笑んだ。そして次の日も、その次の日も同じ場所、同じ時間に男の子と女の子は会って、またその次の日の会う約束を交わす。

ジュリエット・エヴァンス【Juliet Evans】が撮った海辺。こんな場所が「Boy Meets Girl」の物語の舞台になればいいな。
 

男の子は女の子に会うととても自然に自分の話をすることができた。女の子も同じように家族のことや飼っている犬のこと、学校のこと、勉強のこと、趣味のことを話してくれた。会っている時間はあっという間に過ぎていった。

 

何度か会っているうちに二人は魅かれ合う。ごく自然に。二人の距離は縮まっていく。男の子は女の子と会っていない時間もずっと女の子のことを考えるようになる。

 

ある日、いつもの約束の時間になっても、彼女は浜辺に現れなかった。彼女と出会ってからちょうど10日目だったので、男の子はまだ数日、彼女と会えると思っていたから、最後の日には彼女の連絡先をちゃんと聞こうと考えていた。

 

男の子はしばらくの間、彼女と過ごした時間を想い返しながら、その時々に感じた微妙な自分の気持ちを重ね合わせた。何故、彼女はこの場所に来ないんだろうか。いろんな思考が頭の中を巡った。男の子に苛立ちと後悔のような感情が芽生える。そして男の子は、恐らく彼女はもう普段の生活に戻ってしまったんだと思った。

 

それからの数日間、男の子は同じ場所、同じ時間に海辺に足を運んだ。だけど彼女はもうそこへは現れなかった。周りの風景は彼女と会っていた時と同じだ。ただそこに吹く風と波の表情だけは微妙に変わったように思えた。

 

夏が終わろうとしていた。

 

夏休みの最後の日に。男の子はもう一度、同じ時間の、同じ場所に来て海を眺めた。そして、男の子は女の子との、その数日間の想い出を自分の中の引き出しの中にそっとしまい込んだ後、その引き出しに鍵を掛けた。

 

僕が考える、最もオーソドックスな「Boy Meets Girl」の物語はそれでおしまい。

 

僕の中の『Boy Meets Girl』の物語は…そう。それは『Girl Meets Boy』の物語ではないので、女の子の気持ちがよく分からないまま進行し(そこには男の子には永遠に分からない女の子の不思議が内包されているから)、最後には男の子の心の中に「空白」のようなものが生まれて、そして終わる。

若林勇人が撮影したSeaside in Japan。夏の終わりに相応しい風景。
 

例えば、村上春樹の作品でもそうだけど。いろんなシチュエーションがあって、いろんな登場人物の複雑な関係性の中で話は進んでいく。だけど、どこかに「Boy Meets Girl」の物語が流れているような気がするんだうーん

 

男性が考える「Boy Meets Girl」の物語はいつも都合がよく、恥ずかしいほどノスタルジックでロマンティークだ。僕は嫌いじゃないけど。

 

                 「Bar Adieu Romantique」店主より

 

そろそろ「Bar Adieu Romantique」のオープンの時間だ。

 

今回の「Bar Adieu Romantique」がキュレーションするプチ企画展は、季節感を無視して。『夏の風景~Boy Meets Girlの物語』
 
🎨1970年代終わり頃から1980年代初めにかけて。不条理ギャグ漫画『すすめ !! パイレーツ』『ストップ !! ひばりくん!』で人気があった江口寿史。その頃からNew Waveなどの音楽をネタ的に滑り込ませたセンスが光っていた。現在は少しノスタルジックでキラキラした、だけど何処かセンシティヴな感受性を持った女の子たちを描き、第一線のイラストレーターとして活躍している。
 
🎨僕が考えた『Boy Meets Girl』の物語で。女の子が待ち合わせの場所にこんな風に恥ずかしそうにレコードを持ってきてくれたら…。もはや僕の個人の妄想でしかないことを言い訳にして。
 
音譜イラストは秋っぽいな。彼女が試聴しているレコードは1978年にリリースされた大貫妙子のアルバム『MIGNONNE』だし。こういうところが江口寿史のセンスなんだな。僕は嫌いじゃないけど。
 
 🎨キャスリン・マシューズ【Kathryn Matthews】の、女性ならではの感受性に溢れた音楽的な風景画。とにかく柔らかな色彩が素晴らしい。しばらく眺めていると。どこからともなく音楽が聞こえてきて、この絵の世界に入り込んでしまう。「Boy Meets Girl」の物語の舞台がこんな海辺なら、ほんと素敵だと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
🎨永井博鈴木英人のイラストレーションを柔らかに描き換えた、辰巳奈穂【Naho Tatsumi】の世界。こういうタッチ、好きなんだなぁにやり
 
 
 
 
 
 
 
📷️若林勇人【Hayato Wakabayashi】が撮った日本の海辺。
 
 
 
 
🎨リサ・ゴライトリー【Lisa Golightly】が描いた、キラキラした海辺の風景。
 
 
 
 
 
📷️イギリスの人気写真家、マーティン・パー【Martin Parr】。どこの海辺にも転がっているようリアルな風景が独特のユーモアとアイロニーによって写し撮られている。
 
 
 
 
 
🎨1955年生まれのアメリカのアーティスト、ボー・バートレット【Bo Bartlette】が描いたリアリスム絵画、なんだけど。「魔術的リアリスム的」とも「シュルレアリスム的」とも言えるような、とても不思議な海辺の絵。この人の作品を観ていると、いろんな物語が浮かんでくる。
 
 
 
 
 
🎨南カリフォルニアで活動するアーティスト、Chris Gwaltneyの、抽象と具象の間を行き来する作品。見てるだけでとても心地良く感じるのは、すべての作品が柔らかな色彩に包まれているからかな。
 
 
 
 
 
 
 
ほんと季節感がないけどぼけー。音楽も夏向きなものを中心に。
 
音譜理想的な「Boy Meets Girl」の物語とも言うべき映画、ロバート・マリガンゲイリー・グライムスジェニファー・オニールを主演に据えて、1971年に撮った『おもいでの夏』【Summer of '42】ミシェル・ルグラン【Michel Legrand】のテーマ曲がノスタルジックでロマンティークな雰囲気を喚起させてくれる。
 

 
音譜世の中には「Boy Meets Girl」だけではなく大人の「男性」と「女性」が出会う物語もたくさんある。だけど大人の「男性」と「女性」が出会う物語は、英語ではなくフランス語の方がよく似合う。『Un Homme Rencontre Une Femme』と。そんな大人の出会いの物語を代表するのは1966年にクロード・ルルーシュが撮ったフランス映画『男と女』【Un Homme et Une Femme】。出会う男女はジャン=ルイ・トランティニアン演じるジャン・ルイアヌーク・エーメが演じるアンヌ。ドーヴィルの海辺で二人がデートをする場面では、彫刻家アルベルト・ジャコメッティの話がごく普通に交わされる。とてもフランスらしいし、大人の男と女の素敵な会話だと思えた。
 
音楽はフランシス・レイ【Francis Lai】。歌っているのはピエール・バルーニコール・クロワジール。大人の「男性」と「女性」の物語にはノスタルジックな要素が少ない分、アンニュイが溢れている。
 

 
海辺で出会う「Boy Meets Girl」の物語とはまったく異なる「Boy Meets Girl」の物語を滑り込ませよう。
 
🎦リュック・ベッソンジャン=ジャック・ベネックスと共に「恐るべき子供たち」【Les Enfants Terribles】と言われた、若きレオス・カラックスドニ・ラヴァンミレーユ・ペリエを主役に据えて、1983年に撮ったデビュー作。タイトルは文字通り『ボーイ・ミーツ・ガール』【Boy Meets Girl】『汚れた血』(1986)、『ポンヌフの恋人』(1991)へと続く、ドニ・ラヴァン演じる(レオス・カラックスの分身とも言える)アレックス3部作の最初の作品。
 
モノクロームのパリの街で。息を潜めるように出会う、ささやかで痛々しい「Boy Meets Girl」の物語の、そのTrailerを。
 

 
音譜ヴェルヴェット・アンダーグラウンドソニック・ユースを思い起こさせるような。トム・ダウズのギターにポエトリーに絡むフローレンス・ショウの危ういボーカルが魅力的で。アブストラクト・パンクな感じが最高にCoolでカッコいいイギリスのバンド、ドライ・クリーニング【Dry Cleaning】(バンド名に意味はなさそう。記号化されているよね)。2022年にリリースしたセカンド・アルバム『Stumpwork』から『Kwenchy Kups』『Gary Ashby』を。



音譜イギリスの女性SSW、レイチェル・タッド【Rachael  Dadd】の2014年のアルバム『We Resonate』から『I Am Your Home 』。カヴァー・アートがいい雰囲気を出しているよね。
 

 
音譜夏の夕方の浜辺で。男の子と女の子がささやかな会話をしながら過ごす時間の、最高のBGMになるトレーシー・ソーン【Tracey Thorn】の曲『Small Town Girl』ネオ・アコースティックな音楽を送り出した音楽レーベル「チェリー・レッド」から1982年にリリースされたソロ・アルバム『遠い渚』【A Distance Shore】から。
 

 
音譜トレイシー・ソーンエヴリシング・バット・ザ・ガール【Everything But The Girl】を結成する以前に「チェリー・レッド」から1983年にリリースされたベン・ワット【Ben Watt】のソロ・アルバム『North Marine Drive』からタイトル曲を(1980年代中頃にこのタイトルをまんまパクったアパレル・ブランドがあったような気がするうーん)。先のトレイシーのアルバムと併せて聴きたい名盤である。
 

 
音譜イギリスのリヴァプールで活動する女性SSW、キャスリン・ウィリアムス【Kathryn Williams】。1999年のデビュー・アルバム『Old Low Light』から『Mirrorball』。アルバムのカヴァー写真もノスタルジックで、とてもロマンテーク。
 

 
音譜北里彰久のソロ・ユニット、アルフレッド・ビーチ・サンダル【Alfred Beach Sandal】の2013年のアルバム『Dead Montano』から『Coke , Summertime』
 

 
音譜黒澤健のソロ・ユニット、soraが2003年にリリースしたエレクトロニカの名盤『re.sort』。初めて聴いた時の、その心地いい衝撃といったら。1980年代のテクノポップ以降のエレクトロな、こういうリゾート感って日本人にしか出せないんだよね(80年代なら、例えば細野晴臣を代表として、ウォーターメロンとかイノヤマランドとか、テストパターンとか)。曲はこのアルバムから『Pause』『A Caminho Do Mar』を2曲続けて。
 

 

 
音譜1990年代中頃にジョン・マッケンタイア率いるトータスジム・オルークを中心にした「シカゴ音響系」(後にポスト・ロックに集約される)と呼ばれたザ・シー・アンド・ケイク【The Sea And Cake】の2000年リリースのアルバム『OUi』から、(矛盾してるけど)緩やかにスピード感がある曲『Afternoon Speaker』
 

 
音譜ザ・シー・アンド・ケイクを率いるサム・プレコップ【Sam Prekop】のファースト・ソロ・アルバムから
『Showrooms』を。アルバム・アートからもその音楽は的確に表現されている。
 

 
音譜ナガシマトモコ藤本一馬により1998年に結成され、2002年にメジャーデビューしたオレンジ・ペコー【Orange Pekoe】のデビュー・シングル『Love Life』を。カンバラ クニエが描いたイラストレーションも印象的だったし、当時、ほんとよく聴いた。懐かしいな。
 

 
音譜アヴェンジャーズ・イン・サイファイ【Avengers In Sci-Fi】の2017年リリースのシングル曲『I Was Born To Dance With You』をオフィシャルPVで。元気があるようで脱力していて。何だかアカ抜けないけど、微笑ましくって微妙にカッコいい。

 
音譜インドネシアのジャカルタで活動するSSW、アディティア・ソフィアン【Adhitia Sofyan】のアルバム『Quiet down』から『Adelaide Sky』を。まるでハワイのアコースティック・ソングのような、まったりした雰囲気がいいな。
 

 
音譜ハワイのSSW、リチャード・ナット【Richard Natto】の1980年のアルバム『Not Just Another Pretty Face』から。スティーヴン・ビショップの1978年の名盤『BISH』に収められていた『Bish's Hideaway』のカヴァーを。曲はもちろんいいし、リチャード・ナットのパフォーマンスもとてもいい感じに。
 

 
音譜日本を代表するギタリスト&コンポーザーである伊藤ゴローのソロ・ユニット、ムーズ・ヒル【Moose Hill】の2001年のファースト・アルバム『Wolf Song』から。何て素敵な音楽なのだろう。ミニマルなのに(いや。だからこそ、なのかも)さまざまな表情があり、何度聴いても聴き飽きることがない。『Book Of Days』『Little Town North』を2曲続けて。

 

 
音譜1973年に元はっぴいえんど細野晴臣鈴木茂と、小坂忠のバックバンド、フォージョー・ハーフのメンバーだった松任谷正隆林立夫によって「キャラメル・ママ」の名前で結成され、1970年代後半に自然消滅した、(バンドというより優れた個の音楽家、ミュージシャンの集合体)ティン・パン・アレー【Tin Pan Alley】の1975年のファースト・アルバム(キャラメル・ママ名義)から鈴木茂『ソバカスの少女』ft.南佳孝を。アルバム・カヴァーは小林克也のMCが入った、とても素敵な彼らのベスト・アルバム『イエロー・マジック・カーニバル』(このタイトルは、同じくティン・パンのファースト・アルバムに収められていた曲のタイトルでもあり、後のYMOへと繋がるイメージがすでに細野さんの頭の中にあったと思うんだなうーん)をUPした。
 

 
音譜2017年にリリースされた、エビスビーツ【Evisbeats】のシングル曲『明星』ft.OORUTAICHI。この人の独特の「Time感」とそこから生まれるオリジナルな「Groove感」は最高!
 

 
音譜1990年代後半にDouble FamousやPort Of Notesのボーカリストを務めた後、ソロ活動を行ってきた畠山美由紀が昨年、オレンジ・ペコー藤本一馬とのデュオで昨年、制作・リリースしたアルバム『夜の庭』から『この空の下』。アルバム・カヴァーを含め、実にノスタルジックで、ロマンティーク。
 

 
音譜マセーゴ【Masago】ことMicah DavisとDJ兼プロデューサーのMedasinの2016年のアルバム『Pink Polo EP』からロマンティークなインストゥルメンタル曲『Sundai Vibes』
 

 
音譜どんな歌でもすべて自分のオリジナルとして歌ええる偉大なる歌手、ニーナ・シモン【Nina Simone】の1971年のアルバム『Here Comes The Sun』から。カントリーのジェリー・ジェフ・ウォーカーの曲のHOTなカヴァー『Mr.Bojangle』を。
 

 
それにしても、寒いのは苦手だなえー?。 「Boy Meets Girl」の物語に想いを馳せて。僕は夏の訪れを待ち侘びている。
 
それでは、また。
アデュー・ロマンティークニコ