文章の書き方指南:読みにくい文章の特徴 | texas-no-kumagusuのブログ

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トミオ・ペトロスキー(Tomio Petrosky、日本名:山越富夫)のブログです。

読みにくい文章の特徴を列記しておきます。そこを直すと読みやすい文章が書けるようになると思います。 はじめに目次を書いておきます。各論をその下に書きます。
 

結論を初めの早い段階で示されていない文章

 

読者の立場でなくて書き手の立場で書かれている文章

 

「であるが、、、」とか「であるので、、、」とかの「が」や「ので」などの様々な接続助詞を使って、やたらに長くなっている文章

 

主語と述語の距離が離れすぎている文章

 

長い文章の場合、一つの内容を論じているときに別の内容は割り込んできて、二つの内容が行ったり来たりしている文章

 

日本語は「てにをは」などの助詞があるために、語順を自在に入れ替えても同じ意味が表現できることが意識されていない文章

 

代名詞がやたらと多い文章

 

段落を切らずに、だらだらと続く文章

 

句読点がやたらに多い文章

 


以下各論です。

結論を初めの早い段階で示されていない文章

 

書き手は相手を説得するために、ついその結論に導かれるための論理を先に持ってきたくなってしまいす。しかし、その論理でどんな結論を導こうとしているのかを初めの方に書いておいてくれないと、読者はどこに連れて行かれてしまうのか分かりません。その論理が如何に正しくて、さらに読者がその正しさを理解していても、それで行き先がわからないと不安になります。


初めにゴールが見えていれば、それに導く論理を聞いているときにそのゴールとの関連でその論理を理解しようとします。だから、その論理に少々緻密さが欠けていても読者は負担なく読み進めることができます。

 

読者の立場でなくて書き手の立場で書かれている文章

 

書き手は当然自分で何を言いたいのか前以て分かっている事を書きます。そして、その事は急に思いついたわけでは無くて、今までにそれなりの考察をしてきた事柄を書いています。その結果、その書き手は過去には自分自身が自明でなかった事でも、何度か目からウロコの経験やコロンブスの卵の経験をしてきた結果、知らず知らずに間に自明になっています。


ところが、読み手はその事を初めて聞くことが多く、ですからかつての書き手のように自明でない事だらけです。だから書き手にとって自明な事をそのまま読み手にぶつけても相手は即座に理解できません。

 

文章を書くときには書き手が自分の過去を振り返って、どこで驚いたか、どこで目が開かれたかを思い出してみてください。そして、その過去の状態が読み手の今の状態である事を認識しながら、読み手の立場に立って文章を書く必要があります。
読み手のの立場に立たずに書かれた文章は「独りよがりの文章」ということもできます。

 

「であるが、、、」とか「であるので、、、」とかの「が」や「ので」などの様々な接続助詞を使って、やたらに長くなっている文章

 

どんなに論理的で論旨がしっかりしていても、一つの文章の中に幾つもの事柄を詰め込まれてしまうと、読者には負担になり読み続けられなくなってしまいます。できるだけ接続助詞の使用を控え、そこで一旦句点の「。」をつけて文章を切って書く。そして、その後の文章を適切な接続詞をつけて、新たな独立な文にして書きます。例えば、


「であるが、、、」を「である。しかし、、、」

 

としたり、

 

「であるので、、、」を「である。したがって、、、」とか「である。その結果、、、」

 

などといくらでも工夫ができます。

 

主語と述語の距離が離れすぎている文章
 

例えば英語では S+V+Oという語順で主語Sのすぐ後に述語Vが出てくるので、主語がどうしたという結論がすぐに判る。しかし、日本語では主語が書かれている場合にはS+O+Vというように、主語と述語の間に目的語Oや説明文が入ってしまい、主語と述語の距離が離れています。そして真ん中のOの部分が長ければ長いほど読みづらい文章になっています。そのような場合には、例えば、

 

「それは、なになにでかにかにで、そしてなになにだから間違いです」

 

 

「それは、次のことから間違いです。その理由とは、なになにでかにかにで、そしてなになにだからです」

 

と書くか、もっと読みやすく、

 

「それは、次のことから間違いなのです。その理由とは、1)なになにで、2)かにかにで、そして3)なになに、だからです」

 

と思い切って番号付をして見る工夫をする。

 

長い文章の場合、一つの内容を論じているときに別の内容は割り込んできて、二つの内容が行ったり来たりしている文章

 

原則として一つの内容は一か所にまとめて書く。もちろん、話の流れ次第では、「ちょっと話が逸れますが」という出だしなどを入れて段落を変え、そこに挿入する技巧もあり得ます。そかし、その話が終わったら、「話を元に戻して」などを入れてまた段落を変え、内容のつながりを明示しておく。

 

日本語は「てにをは」などの助詞があるために、語順を自在に入れ替えても同じ意味が表現できることが意識されていない文章

 

その場合には文章を何度も読み返して、その論旨を伝えるのに一番自然な流れを感じさせるように、初めに書いた文章を入れ替えてみる必要があります。

 

「私は、、、と言う理由からそれに反対です」

 

とするか、

 

「、、、、と言う理由から、それに私は反対です」

 

と言う文章を比べてどちらが今述べている事柄に関して自然な流れであるかを考える努力をしてみることです。

 

代名詞がやたらと多い文章

 

代名詞を適切に判断するには、その代名詞が意味するものを覚えていなくてならない。しかし読む人は色々な状況で読んでいるので、そんなこといちいち覚えている状況でないし暇がないことがいくらでもある。そんな時に代名詞で表現されてしまうと、もう一度前文を読み返さなくてはならない羽目に陥ってしまい、腹が立って、もう投げ出してしまう可能性もあります。ですから、もしこちらの言いたいことを伝えたいのなら、代名詞を使わずに少しくどいくらい、同じ言葉を出した方が読み易いので、読み続けてもらえます。

 

そもそも、大学受験に「この代名詞は何を指すのか」なんて問題が出されるような文章は悪文中の悪文です。そんなこと余りにも自明で、試験問題に出せないくらいな代名詞の使い方なら、それを使っても良いという程度に代名詞は使うべきです。受験に出される文章の悪文さ加減にはほとほと感心させられてしまいます。

 

それと同じ意味で、繰り返し同じ言葉を意識的に使った場合の方が読みやすくなる文章もいくらでもあります。初心者向けの書き方読本には繰り返しを避けよなんて書いてありますが、同じ言葉を繰り返すことによって、相手にもっと円滑に深く理解してもらえるという高度な技巧があることをお忘れなく。

 

段落を切らずに、だらだらと続く文章

 

特にスクリーン上で読む場合、段落が長いと休みが取れず読む方が疲れます。スクリーン上では紙面上よりもずっと段落を短く切って文章を書くと読みやすくなります。

 

句読点がやたらに多い文章

 

江戸時代までは句点も句読点もなく文章を書いていて、それでも読めるように書いていました。次の例は『徒然草』の冒頭です、

 

つれづれなるままに日暮らし硯(すずり)に向かひて心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ

 

次は『方丈記』の冒頭です、

 

ゆく河の流れは絶えずしてしかももとの水にあらずよどみに浮かぶうたかたはかつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし世の中にある人とすみかとまたかくのごとし

 

両方ともすんなり読めますね。歯切れの良さが句点や句読点を必要とさせていないのです。高度な工夫ですが、そのように歯切れが良い文章にする工夫をすると、句読点の数を減らしても読みやすくなります。