色事と手向け花 | texas-no-kumagusuのブログ

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トミオ・ペトロスキー(Tomio Petrosky、日本名:山越富夫)のブログです。

時々寄稿する「教えて!goo」 の哲学欄に

人は仏前や墓前に花を供えてそれを供養します。この行いの動機や意味、またそれを花でもって為すのは何故か、という事を問いたいと思います。」

という質問が立ちました。何故人々は
花に魅かれ、天国や極楽に花が咲き乱れているのかという質問と勝手に解釈して、今回は、何で色が色事と結びついちゃったのでしょうかという話を書いてみます。

ほとんどの哺乳類の眼細胞は主に明暗だけに反応する桿体細胞で構成されていますが、人間はそれに加えて色を識別する錐体細胞が他の哺乳類より顕著に発達していると中学校か高校で習ったことがあります。ですから哺乳類の中では人間は例外的に色を敏感に識別して、それに興奮する。他の生物で色にことさら敏感に反応するのは昆虫が筆頭で、鳥類も人間以上に識別が可能なようです。また日本の河川に住むオイカワ(ヤマベとも呼ばれる)と言う魚は繁殖期になると雄が色鮮やかになりますので、魚も色の識別ができる種がいるようです。 オイカワの写真を私のブログ
女の夜ばい  』 2013-10-08に貼付けてありますのでそこを見てください。

そもそも、この地球上に花が出現して来たのは今から8千万年ほど前、恐竜たちが大分衰退してしまったころですので、ほとんどの恐竜は花を見たことがない。 それ以前は植物は風や水の流れを利用して受粉していたのですが、あるとき自然は昆虫を媒体にして受粉させることを思い付いた。たまたま昆虫は色を識別できる眼細胞をもっていたので、植物の受粉器、すなわち、植物の性器の周りに色を付けた方が受粉の確率が高くなる。そこで植物たちは競って性器を色鮮やかにして昆虫を引きつけ生き残りを謀る方向に進化して来た。これが花なんですね。

だから花は人を喜ばせるためにこの世界に出現して来たのではない。植物が生き残りのために昆虫を興奮させ喜ばせるために、花ができるだけ派手に目立つようになった。たまたま、人間にも色を識別できる錐体細胞が他の哺乳類と比べて豊富ににあったために、そのおこぼれをもらい、人間も昆虫や鳥類と同じように色に興奮できた。それが生殖機能にも影響を与え、人間は色を見て昆虫や鳥類並みに喜べるようになっているのではないでしょうか。事実、女性方が花のように着飾る衝動に駆られるのは結婚適齢期と言う生殖機能が最も高くなった時期ですし、小鳥たちも春の生殖期に雄たちが最も色鮮やかになりますから。

幸福感が花のもっている色と密接に結びついている証拠がどの民族でも共通して描く浄土ないし天国像にあります。どの天国でも天国の初級編には、色とりどりできらびやかな花が咲き乱れています。死後の世界を天国のように色とりどりな、だから、幸福感を味わえる世界としてあげたいと言う残された者の気持ちが花を手向ける行為として現れているのだと思います。

そして色は色事の象徴でもある。この睦み事の幸福感を色と捉え、色事と表現した事情は、やはり、きらびやかな花や夕焼けや朝焼けの夢のようなの色を見て興奮できると言う、哺乳類の中では人間が例外的に色に反応できる結果で、多分幸福感が根の深い所で生殖行為の感覚に繋がっているからなのではないでしょうか。