江戸城に登城した時、成富兵庫も勝茂のお供をした。
控えで待っているとき、気分を悪くしたものがいたので、
兵庫は茶坊主に水を持ってきてくれるよう頼んだ。
坊主はもってきてくれたが、ふちが欠けた粗末な茶碗をもってきた。
「俺たちが、田舎者だからなめているのか。」
兵庫は意趣を返すことにした。
成富兵庫らしいやり方で。
兵庫はその茶坊主の名前と住所をたずねた。
いきなりだったし、不審に思って躊躇していたが、
あまりにしつこく聞いてくるので、坊主は仕方なく教えた。
翌日、兵庫は茶坊主の家へ家来数十人とともにお礼にうかがった。
そして、その茶坊主には、紗綾の生地10巻を贈った。
茶坊主も、あれだけのことで、ここまでしてくれることに驚きをかくせなかった。
それ以来、鍋島家中が登城すると、茶坊主は、
「兵庫殿のお供でしょうか?」
とつき合いをよくしてくれる。
湯茶までサービスしてくれる始末だった。
また、茶坊主の仲間も兵庫のところへと連れて行き、
兵庫はその者たちにも贈り物を配った。
気をよくした茶坊主たちは、兵庫のところへと通うようになり、
色々な噂話をするようになった。
こうして、鍋島家は江戸城内の情報を手に入れる手段を得ることができた。
諸大名もこれを見習って、茶坊主を求めたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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