島原の乱での抜け駆けによって、閉門に処せられた鍋島勝茂。
しかし、幕府からの出頭命令を受けて江戸に着いたばかりの時は、
処分が発表されておらず、
「どうやら遠流となるらしい。」
との噂がもっぱら囁かれていた。
とりあえず中屋敷に入った勝茂を出迎えたのは、長男・元茂(小城鍋島家当主)の妻。
手柄を立てた筈がいつの間にやら罪人扱いとなり、意気消沈している義父を迎えた嫁、
開口一番きっぱりと言い切った。
「義父上、すべての準備は整っております。」
「準備? 何の?」
「戦の準備に決まっておりましょう!」
平然と言ってのける嫁。
言われてみれば中屋敷は戦仕度の慌しい雰囲気に包まれている。
「い、戦って……ワシ、その戦から帰ってきたばかりなんじゃケド……。
ついでにその戦のコトでお叱りを受ける為に呼び出されたワケで……。」
「承知しております。世間での噂では義父上は遠流を仰せ付けられるとの事。
もし噂が本当ならば、佐賀藩の江戸屋敷六つ全てに火を放ち、
江戸に居る全ての藩士が討ち死にするまで戦い抜く所存。
既に全ての準備は整っております故、義父上は何の遠慮もなく、
堂々と幕府に対し、この度の申し開きをなさいますよう、お願いいたします。」
嫁の姿越しに屋敷の中を窺うと、既に武器弾薬等が山と詰まれ、
本格的な戦の準備が整っていたと言う。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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