ある時、鍋島勝茂が、領内の西目という地で狩りを行った。
ところがその際、何やら不手際があったのか、
副島善之丞という男を激しく叱りつけた。
脇差を鞘ごと抜き、善之丞の頭を打ち据えるというホドだから、
相当なご立腹だったようだ。
が、その時、興奮のあまりか手を滑らせて、脇差を落としてしまった。
脇差はそのまま崖の下の谷底へと一直線。
誰もが脇差に眼を奪われた瞬間…。
善之丞、飛んだ。
崖から飛び降りた。
脇差の後を追って谷底まで飛び降りると、拾い上げた脇差を襟元へ差し、崖を登る。
やがて崖を登りきると、勝茂の前に拾った脇差を差し出したのである。
勝茂も怒りを納め、善之丞への処罰は何もなかったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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