ある時、鍋島勝茂が、領内の白石という地で狩りを行った。
ところがその日は朝から非常に寒い日で、あまりの寒さに辟易した勝茂、
近くの民家に避難した。
「突然のコトで申し訳ないのだが、この寒さに難儀している。
暫く火に当たらせてもらっても良いだろうか?」
この家の老婆は、突然の殿様の訪問にもまったく動じず、
「今朝はひとしお冷えますからのぉ、
これでは流石のお武家様方もたまらんでしょう。
さぁさぁ、どうぞご遠慮なく温まってくだされ。」
暫く老婆と談笑しながら火に当たると身体も温まってきた。
勝茂は老婆に丁寧に礼を言って家を出る。
が、その時、勝茂を見送りに庭に出てきた老婆の目付きが変わる。
「何をしとるかっ!
その米は佐賀の殿様に差し上げる米じゃぞ!
それを踏みつけにするなど無礼にもホドがあるっ!」
そう、庭に出た勝茂、ついうっかりと、
ゴザに広げられた年貢米を踏んでしまったのである。
激怒した老婆は箒を手に、勝茂の脚を力一杯打ち据えた。
慌てて飛び退いた勝茂は、
「これは申し訳ないコトをしてしまった。許してくれ。」
と何度も頭を下げて帰って行った。
その後、老婆の家は名字帯刀を勝茂から許され、
白石の名主として取り立てられたと言う。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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