名槍・日本号を☆ | げむおた街道をゆく

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ある時、黒田長政が、福島正則の下に、家臣・母里太兵衛を使者に出すことにした。

が、福島正則といえば有名な酒豪。

また母里太兵衛も黒田家屈指の酒飲みであり、
太兵衛が酒で役目をしくじる事を心配した長政は、
「正則から酒を進められても、決して飲まぬ事。」

と禁酒を厳命し送り出した。

さて、太兵衛が福島正則の下に赴くと、案の定、朝から酒宴を張っている。
彼は太兵衛の到着を喜び、

「用件は後でよい、先ずは一杯。」

と、酒をなみなみと注いだ大杯を進めてきた。

 

酒好きの太兵衛、これにはグラリと来たが、主君の厳命がある、飲めない。

「そ、それがし酒は無調法でして、どうかご容赦を…。」

しかしそこは酔っ払っている正則。聞きはしない。
「良いから飲め! そちがこれを飲み干せば、望みの物を何でも取らせようぞ!」
「いやしかし、主君からも酒は飲むなと…。」

こういわれると正則はエスカレートしてくる。

酔っ払っているだけにノンストップだ。

「わしの酒が飲めないとあれば! お主の口を割ってでも飲ませようぞ!」
「例え八つ裂きにされても飲め申せず!」

すると正則、突然大笑し、
「天下に名の知れた母里太兵衛ですら、たかが一杯の酒に後ろを見せるとは、
黒田家は腰抜け侍ばかりの、豆腐同然の骨も筋もない、弱虫藩じゃのう!」

ここまで言われては武士の面目にかかわる。

ついに太兵衛は承知する。

「ところで先ほどの、これを飲み干せば望みの物を何でも取らせるとの仰せ、
よもやお間違いはありませぬな?」

正則はいい気になっている。

「おお、勿論じゃ!」

すると太兵衛は朱塗りの、直径一尺(約30cm)の大杯に並々と注がれた酒を、
立て続けに三杯飲み干した。
そしてうろたえる正則から、福島家秘蔵の品、名槍・日本号を取上げた。

太兵衛はこの槍をかつぎ、黒田藩歌「筑前今様」を吟じながら、悠々と帰っていったという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 名槍・日本号、母里友信

 

 

 

ごきげんよう!