大坂の陣の時のこと。
渡辺糺と大野治長が話し合いをしているところに、
後藤又兵衛がやって来て、こんな事を言い出した。
「面白い事を聞きましたよ。大住與左衛門は、東軍(幕府方)に内通しているって噂だ。」
大野治長、これを聞くと首を振り、
「いやいや、與左衛門に限ってそんな事はありえぬ。
あいつは故太閤殿下の魚洗いであったのだが、実直ものだとしてお取立てなされ、
『秀頼公に、ご機嫌よく物をあてがうように。』
と御付になされたのだ。
そして今回の籠城が始まってからも、與左衛門は城内のあまたの倉の鍵を手元に置き、
昼夜の別なく御用をなし、また見廻りをしている。
あの熱心な姿を見れば、
あいつが二心を抱くなど考えもつかない。」
すると又兵衛、
「愚鈍な人間よりも、そう言う奴に気をつけなきゃいかんのですよ。」
と言って去った。
後日、夏の陣の時、城内から火をつけたのは、この大住與左衛門の仕業であったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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