朝鮮へ初めて諸軍渡って上陸すると、辺民がことごとく逃散して、みな空き家となっていた。
兵卒がその家に入ってみると、壺瓶の類に、酒が満ち溢れていた。
時に、誰かが言い出したのだろうか、
「これは毒酒で、人を殺す計である。」
との噂が流れた。
諸人は聞いて恐れ、飲む者はいなかった。
又兵衛は、
「例え何であろうと渇きを凌ぐに十分だ。
もし毒があれば我が一番に飲んで死のう。」
と飲み始めた。
「言葉にできない美味だ。」
諸卒これを視て、我先にと群飲して、益々鋭気を得たという。
世諺にいう毒の試とはこれから始まったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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