栗山大膳(利章)。
黒田八虎の一人、栗山利安の子で、黒田家の重臣である。
筑後川中流・杷木町の北方に標高300メートル足らずの麻底良山(まてらやま)がある。
その軍事的必要から山頂にお城の本丸が築かれ、福岡城の支城となり、
一帯を任されたのが栗山大膳だった。
ある日、大膳の元に民の代表がやってきた。
「この近所の池に棲む巨大な亀が、
最近になって街道(現朝倉街道)を通る旅人を襲い始めたんです。
何とかして下さい。」
「は? 亀?」
半信半疑の大膳は、家来に偵察に向かわせた。
家来は、一日中池を見張ったがそれらしいものは、見なかったと報告した。
「でも近所の茶屋の主人の話だと、
最近、夜中に不気味な唸り声が聞こえて、目が醒めることがよくあるとのことです。」
そこで大膳は腕の立つ家来3人と、
出入り自由の百姓・万造を連れて、香山の麓に向かった。
万造、
「香山の池に棲む亀は、むかしから村の守り神とも言われております。
何とか手荒なことだけはしないで下さい。」
大膳、
「一方では旅人の安全のために退治しろと言うし、
お前は大事な神さまだからダメだと言う。
俺はどうすればいいんだ?」
やがて見上げるような大楠が前方に見えてきた。
その大楠の下が目指す大池である。
大池に着くと、池の中央に浮かぶ岩の上に、
牛か馬ほどもある大きな亀が、甲羅干しをしていた。
この瞬間、大膳の武士としての戦闘本能に火がついた。
大膳、「鉄砲をもて!」
万造、「ちょ、殿様!?」
ズドーン!
弾丸は見事亀の首筋を貫き、水中に転げ落ちた。
その瞬間、あっという間に空一面を黒雲が覆い、稲光が幾筋も走った。
降り出した豪雨は、香山を覆い尽くし、地響きとともに香山の東半分が削り取られ、
崩れた土砂は麓の民家を押し潰していったという。
以後、この災害は「大膳崩れ」と伝えられ、
山崩れにも耐えた楠の大木を「大膳楠」と名づけたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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