栗山備後(利安)がある時、こんな話を聞いた。
「何某が、高い馬を買ったそうだよ。」
備後が、
「いか程で買ったのだ?」
と尋ねると、
「銀二十枚ばかりだそうだ。」
これを聞いた備後は、たちまち不機嫌と成った。
「それほどたわけた奴とは思わなかった!
沙汰の限りだ!
馬というものは、どれだけ高値でも二匹の役はせぬものだ!
ことに死にやすく、また怪我もしやすく、
少しのことで捨てることになるのが馬だ。
是非に及ばぬ沙汰の限りの分別違いである!」
そう罵ったので、言った者はなんとかその場を取り繕うとした。
「いやいや、何某は身代も続き、とりわけ財産も多くあるので、
たいていの損では痛みはないよ。」
「勿論あいつはそうだろう!
しかし彼より知行の少ないものたちは、擦り切れ疲弊している。
そんな中、そのような話を聞けば、少しの貯えであっても、
自分のために使い捨てるような事の出来ない者達は気をくさし、
事によっては、面目ない事態にもなるかもしれない。
彼のはらった馬の代金を、宜しき衆に分配してやりたいよ。
各肝入に売らせれば、銀2,3枚にて、
3年5年役を果たせる馬など、いくらでもあるだろうに!」
そう語った。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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