山田有栄は、島津忠恒の命により、出水の地頭として赴任し、
地元の郷士が歓迎の宴席を設けた。
喜んで宴に出席した有栄が、膳に出された汁物のフタを取ると、
じっくり煮込んだカエルが入っていた。
有栄が郷士たちを見わたすと、空々しく涼しい顔をして、膳に手をつけている。
出水郷士たちの新任、しかもヨソ者の上司に対する、キツい「洗礼」である。
腹を決めた有栄は淡々とカエル汁を平らげ、そのあわてる姿を見たかった郷士たちは、
目を丸くした。
数日後、有栄は郷士たちを集めて言った。
「先日は、なかなか他では食いがたきものを馳走になった。
礼を言う。
今度はわしが宴席を設け、
他では食いがたきものを食わせてやろう。
ぜひ、ご来席あれ。」
恐る恐る郷士たちが宴席に顔を出すと、汁物が用意してある。
フタを開けると、汁には縫い針が入っていた。
「うーむ・・・地頭どの、参り申した・・・・・・。」
以後、出水の郷士たちは、有栄の命に伏するようになったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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