金子元宅☆ | げむおた街道をゆく

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金子備後守を始め家臣一同が山上で花見をしていた。 

そして宴もたけなわになった頃、
数人の若い者が山の中からイノシシの子を生け捕りにして、備後守の所へ持ってきて、
「殿、イノシシの子を捕らえてきました。子供ですから肉も柔らこうございます。

さっそく調理いたします。」
というと、居並ぶ家臣たちは、それはよいご馳走だと喜んだ。

 

ところが備後守は顔を曇らせて、
「そのような可哀想なことはしないでくれ、どうかそのイノシシの子を助けてやってくれ。
余は亥年の生まれである。」
といった。
 

そしてイノシシの子をもとの所へ逃してやりに行った。
ちょうどその時、四、五歳であった備後守の長女カネ姫も家来に連れられて、

一緒について行った。
 

命を助けてくれたイノシシの子は、木立の中に走って行った。

すると数匹の親、兄弟のイノシシが出迎えに来ており、一緒になり、

十歩行っては後をふり向き、二〇歩行ってはふり返りながら木立の中に帰って行った。

時は流れて天正十三年(1585)7月14日、秀吉の四国攻略に対して、
土佐の長曽我部と同盟の義理のため、十倍に余る秀吉軍を相手に戦った金子城もついに落城。
 

当時十六歳になった美しいカネ姫は、家来の守谷一族に守られて、

金子山伝いに土佐へ落ちようとした。
 

しかし敵が追いかけて来て、守谷一族も次から次へと斃れていった。

とうとうカネ姫一人になった。
「あれは金子の姫だ、早く捕まえろ。」
といいながら敵が追いかけて来た。

 

もうだめかと思ったその時、木立の中から数匹のイノシシが牙をむいて、敵におそいかかった。
思いもよらぬ出来事に敵がとまどっている間に姫は危機を脱し、

無事土佐へ逃げることができた。
 

しかしイノシシ達は殺されてしまった。
土佐に逃れたカネ姫は、長曽我部氏に優遇され、また山之内氏の時代になって、
奥女中の取締り役となり、八〇歳の高齢を保った。
 

またカネ姫が逃げる時、身に着けていた衣装や被っている笠が、

木立に引っ掛かって取れなくなったことから、

後世の人は衣笠山と呼ぶようになったという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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