江村親家☆ | げむおた街道をゆく

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江村小備後(親家)といえば、長宗我部家の家臣のうち、

その武勇が四国のみならず中国九州まで鳴り響いた、
長宗我部家を代表する豪の者であった。
 

これはその江村小備後が、13歳の時の事である。

そのころ、江村の近辺では多くの人が失踪する事件があった。
それも、死んで失せるとか、飛んで失せるとか、そういうことではない。

座敷の中に皆で集まって居る時に、
立ち上がったわけでも、その場から出て行ったわけでもないのに、

かき消すように消えてしまうのだ。

一体どんな化け物の所業なのか。

最初は人の目にも見えなかったが、後にはその姿を顕し、あるいは鬼の姿となり、
または女に変じ男に化して、上下を選ばず男女の区別なく、思うままに取り失われたので、
近隣の者たちは貴賎を問わず、申の刻より後(午後5時頃)になると、

家の中に人も入れず、外に出ることもなく、
門を閉じてじっと朝を待った。

これに憤ったのが、当時13歳の少年である、江村小備後であった。
「一体何者の仕業であっても、

私が住む近辺でこのように不快なことが行われているのを、

余所に聞いて暮らすということがあっていいものか!」

そして或夜、深夜に及んで人が皆寝静まった後、誰も連れず唯一人だけで、

西江村の住居を出て、丑寅の方に向かって歩いていくと、

そこに七尺ばかり(約2メートル12センチ)の大法師が、物も言わずに立っていた。

小備後、これこそ話に聞く化け物だ、と思ったが、

何事もないような顔をして近づき、すれ違い様!
抜き打ちにはたと斬った!

太刀音高く、手応えあり!倒れる!と見えたが、これも掻き消すように消えてしまった。
 

その時、小備後は大声を上げた。
「化け物を斬ったるぞ! 続け者共!」

近所の者達この声に驚き、手に手に松明を燈してその場に駆けつけてみれば、

地面に血が流れているではないか。
この血の跡を追っていくと、遥か北の山に、大きな古い墓の五輪塔が倒れて、

空の倫牌が2つに割れ、そこから血が流れていた。

江村の人々は、

「このような古石に誑かされ、数多の男女が悩まされたとは、なんと安からぬことであろうか。
さあ、この墳墓を掘り起こし、白骨と五輪を大路にさらすべし!」

と評議したが、長宗我部国親がこの話を聞き、

「これは稀代の不思議な出来事である。

墓の主はきっと、罪業深く、悪趣に堕した人なのだろう。
誠に憐れなことではないか。」

そう言って石塔を新たに立て、僧を呼んで墓の前で経を読み弔わせた。
この国親の情けが伝わったのだろうか、

その後、化け物があらわれることはなかったそうである。

そして、江村小備後がこの時化け物を斬った刀は「五輪切り」と名付けられ、

後に長宗我部信親に捧げられたという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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