蜂須賀家政の孫の忠英は、幼年の頃やんちゃで、
家来たちは非常に手を焼いた。
もうどうにもならんということで、家臣たちは家政に忠英を戒めるよう頼んだ。
しかし家政は、すぐに忠政を戒めなかった。
しばらく経って、家政は忠英と食事しているところに、
家臣に命じて犬を連れてこさせたが、なぜかその犬は家政の顔を見ると怯えだし、
逃げ去ってしまった。
犬が逃げると、家政は庭に粟をまいた。
すると、雀がまかれた粟に群がった。
そして家政は、おもむろに忠英を抱えると、
「いいかい忠英。さっきの犬はわしがいつも杖でひどく叩いたので、
わしを見て逃げ去ったのじゃ。
対して雀はいつも可愛がっておるから、
すぐに集まって逃げたりはしないのじゃ。
主君と家臣の関係も同じで、
日頃愛をもって接していれば、自然と家臣は主君を慕うのじゃ。
だが、権威で押さえつけるようなことをすれば、従わないだけでなく、
犬のように逃げだすことじゃろう。
今言ったことはよく心に留めるのじゃぞ。」
と諭したのだった。
どうやらすぐに忠英を戒めなかったのは、
犬の仕込みと雀の飼い馴らしをしていたからのようだ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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