家政公が、ある家来を加増したのだが、それから三、四日後に、
家政が駕籠に乗っている時に、中からさらに加増の記帳をして家来に与えた。
ところが家来はまだ最初に加増された時のお礼をしていなかった。
おかしいなと思った家来は家老に、
「某は加増されたばかりで、お礼の言上もしておりませぬ。
にも関わらず、本日加増されたのは何かの間違いなのでしょうか?」
と聞いた。そこで家老が家政にこの事を伝えたところ、家政は、
「実は最初は百五十石与えるつもりだったのだが、いろいろ考えて、
一旦、百石だけ与えたのだ。だが駕籠の中で人間一寸先は闇だと思ってな。
今、残り五十石を与えないと、どこかで何かが起こって、
わしの考えがそのままになるやもしれんと思い、急に記帳を書いたわけだ。」
と述べたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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