江戸にいる蜂須賀家政のもとに、淡路岩屋の百姓達十人ばかりが訴えてきた。
その子細は、岩屋に置かれた伏屋源兵衛は普段から万事辛く沙汰を行い、
その上、失態もあった。
この数々を紙面で願い上げたが取り次ぐ者がいないので、
夜に岩屋より抜け出し、紙面を江戸に持参して直訴したのだという。
家政はこれを聞いて百姓達に向かい、
「皆々が、はるばる参上して、
この坊主を取りはからうに足りる者と頼りに思ったことを満足に思う。
私が帰国の上で速やかに糾明しよう。
長旅にさぞ苦労したことであろう。
ここで緩々と逗留して労を休めて、私より先に帰るがよい。」
と言って、懇意の意向を示し、料理を与えた。
百姓達は大喜びして淡路へ帰った。
さて、家政は帰国すると、
「速やかに岩屋の百姓達は残らず参るように。」
と命じ、百姓達は喜んで早々に参上した。
この時、家政は国奉行をもって、
「お前達は先頃、
江戸へ参上した時に、どのようにして関所を通ったのだ。」
尋ねた。
これに百姓達が申し上げるには、
「伏屋殿から隠れて仮屋より船で大坂へ参り、
それから江戸へ参上いたしました。」
とのことだった。
これを聞いた家政は、
「不届きな奴らめ。国法に背いて関所を破った罪は免れない。ことごとく磔にせよ。」
と命じた。
この仕置きによって、岩屋は治まったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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