笹の才蔵こと可児吉長が、福島家に呼び出された時のこと。
福島正則が才蔵に、
「何か、芸はあるのか。」
と尋ねると、
これに才蔵は慎んで、
「自分の髪を結ったり髭を剃ることに関しては、
年月をかけて手練致しましたので、それが上手になりました。」
と答えた。
近臣の者は、これを聞いて、
「まったく才蔵はうつけ者か、捻くれ者だ。」
と囁いたが、
正則は、
「いやいや、後ろに眼がなければ、
そのようなことは中々修練できぬものだぞ。
それが上手ということは、
目に見えないことさえできるということなのだから、
すなわち目の前のことは、何でも簡単にこなせるということだ。」
と言った。
果たして才蔵は武功比類なき者だったので、
「正則の目利きは、流石にたくみだ。」
と言われたということだ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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