池田輝政が、あるとき御祝の猿楽を設けられた。
そのとき、今日は誰でも大きな音を出して踏み歩くのは構わないが、
もし論争などする者があれば弁明させずに処罰するべしと命じられた。
自らも猿楽をなさっていたとき、拝見している者の中で口論が起こり、
既につかみ合いになっていたため、八田八蔵、梶浦太郎兵衛などが、
走っていって取り鎮め双方を預け置いた。
御前に戻ると輝政が、
「さっきは騒がしかったが何事だ?」
と尋ねられたので太郎兵衛は、
「あれは山椒にむせていた者を傍に居た者が介抱していたのです。
遠くから見ると誠に喧嘩のように見えました。」
と申したので、国清公(池田輝政)は承知なさって、
「それではもうよくなったか、汝が見て帰れ。」
と仰せられたので、太郎兵衛は参り、
「もうよくなりました。」
と申した。
晩に件の両人が御前に伺候すると、
「今日の山椒は"出来事"だったな。」
と仰せられたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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