以後、ご自重あれ☆ | げむおた街道をゆく

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信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

池田恒興の家臣に、森寺政右衛門忠勝という男がいた。

 

恒興の守役と言うべき藤左衛門秀勝の子であり、
若いころから恒興に仕え、伊木清兵衛忠次と、ともに恒興の両腕たる男であったが、

「常山紀談」に『優れたる荒者』と書かれるように武勇に優れ、

そして荒々しい男だった。

ある日、恒興が政右衛門に徳利を見せた。

「どうじゃ! 備前焼の逸品だとか。稲葉一鉄にもらった物だ。」
 

徳利を見た政右衛門、一言。

「ニセモノですな。」
 

「何だと!?」
 

「今ごろ一鉄殿は、さぞかし笑っておりましょう。

にっくき奴輩ですな。

この徳利を一鉄殿の目の前で割ってやったら、さぞかし痛快でしょうな。」
 

「そりゃそうだが、さすがに無礼だろ。

というか、あの一鉄の前でそんな事、やれるモンならやってみろ。」

恒興の言葉を聞くが早いか、政右衛門は徳利を抱えて飛び出した。
「…いかん! アイツの気性では、本当にやりかねん!」

ようやく気づいた恒興だったが、時すでに遅し。

屋敷の門前まで出てハラハラしながら待っていると、
政右衛門が五体満足で駆け戻って来た。

 

「せ、政右衛門! お前、無事だったか!」
 

「おう、殿! これを御覧あれ!」
 

政右衛門は懐から、首だけになった徳利を差し出した。
 

「やりやがった!」

「使者と申して一鉄殿に対面し、縁側の柱に徳利を叩きつけて、

木っ端微塵にしてやりましたわい。
『そやつを捕らえろ!』

と叫んだ一鉄殿の顔、殿にも見せてやりとうござるな。

まあ、縁側に出ていたおかげで、こうして逃げ延びて参りました。」
 

「な、何という事を…。」

「殿が悪うござる。

およそ人の主たる者、一言たりとも慎みあるべし。

わしの発言は確かに無礼でしたが、それを、

『やれるものなら、やってみろ。』

などと侍が言われれば、

『たとえ骨を刻まれようと、やらいでか!』 

と、なります。
今回、帰って来れたのも運が良かっただけ。以後、ご自重あれ。」

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 清洲会議、池田恒興

 

 

 

ごきげんよう!