二人の義死☆ | げむおた街道をゆく

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大内義隆の家臣に、宮部久馬介、浅茅鹿馬介という、二人の小姓があった。
 

義隆は、この二人を別して大切にしていたのだが、

ある時、とある女中からの中傷により、
この鹿馬介を討つようにと、義隆より宮部久馬介に命ぜられた。

宮部は承って、自分の宿舎に帰り考えた。

「それにしても、なんと黙し難い仰せを被るものだろうか。

私は鹿馬介と一緒に奉公仕り、片時も放れたことはなかった。

本当に入魂浅からぬ関係であるのに、

彼に、こんな事を一言も知らせずして空しく討ち果ててしまえば、

草葉の陰で、自分たちの契りはこんなものではなかったはずだと、
どれほど恨むだろうか。

彼に知らせるなら、我も諸共に死ななくては面白くない。

どうせここで死ぬのも主のためなのだから、悪いことではない。」

そう思い定めると、浅茅の部屋へ行き、彼に言った。

「私は大変情けなき仰せを被ってここに来た。

義隆公より、それがしにあなたを討って来い、との仰せを受けたのだ。

しかし日頃から、親しくしていること他に異なる程の仲であるのに、

一言もあなたに知らせず、空しく討ち果たしては、

冥土にて私は必ず恨まれるでしょう。
その上、あなたを討った私のことを、朋輩たちがどのように思うか、如何とも辨え難い。

こうなれば、あなたと刺し違えて、死出の旅路に赴こうと思う。」

浅茅はこれを聞くと、

「さてもさても、日頃から互いをなおざりにしない関係であったのが、

今ここに現れたのであろう。
あなたの心底は長く後の世までも忘れてはならない。
そして、かの女中の中傷に対して、真実を主君に申し開きをして死のう、と思ったが、
女を相手に論じても意味があるだろうか。
私は自害をしようと思う。

なのであなたには、介錯を頼む。」

宮部は、そのように言われて、笑い出して言った。

「私の胸中を定めないまま、どうしてこの事をあなたに知らせるでしょうか?
仏神三宝も御照覧あれ!

私はあなたとともに、相果てなければならない!」

浅茅、このように言われ、

「それならば仕方がない。であれば…。」

と、二人共に思い思いに、
その意趣を細々と書き置きし、川の中瀬に行き、二人はしっかりと体を組んで、

川の中に飛び込み立つ白波と消えた。

 

彼らの死を人々はみな、なんと殊勝な義死を遂げたものかと、

褒めぬ者は居なかった。

義隆は彼らの書き置きを見て後悔したが、もはや取り返しのつくことではなかった。
 

彼は中傷をしていた女を召し出すと、

「あの者たちの追善にせよ。」

と、彼らが入水した中瀬にて、

柴漬け(ふしつけ:簀巻きにして水中に投げ入れること)にして、

水の中に投げ捨てたと言われている。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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ごきげんよう!