茶の湯の大嫌いな若侍がいた。
あんなものは武士の嗜む物ではない、と、いつも高言していた。
それを聞いた悪友の一人が、
「しかし、お前の義兄は、茶の湯好きとして有名ではないか。」
と、ケチをつける。
痛いところを突かれた若侍、
「軟弱な義兄を懲らしめねばならぬ。」
と、義兄・中川清兵衛の屋敷に忍び込み、彼自慢の茶の湯釜を盗み出した。
せっかく盗んだ茶の湯釜である。
これで一つ茶の湯の真似事でもしてみよう、と悪友たちに囃され、
彼も一通りやってみた。
「これは…以外に面白いものではないか?」
真似事をしているうちにふと、若侍の中に、そんな感情がわいてきた。
この若侍、後に天下一茶の湯宗匠・古田織部と呼ばれることになる。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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